第7話 脱出への決意

ギギ・アンダルシアはスイートルームの窓から広がる宇宙の光景をぼんやりと見つめていた。シグマ・ステーションの外に広がる星々の輝きは、彼女にとってかつて自由の象徴だった。しかし今、その輝きはどこか遠く感じられた。部屋に漂う静寂の中で、彼女の心には一抹の不安が渦巻いていた。


「ここから出なければ…。」


ギギは自らにそう言い聞かせると、通信端末に目をやった。彼女はハサウェイからのメッセージを待っていた。彼と再び会うことで、今抱えているすべての不安から解放されると信じていた。


その時、端末が振動し、ハサウェイからのメッセージが表示された。


「今すぐ会おう。指定の場所で待っている。」


短い指示だったが、その言葉にギギは一瞬迷いを振り払った。彼女は急いでコートを羽織り、部屋を後にした。心臓の鼓動が高鳴るのを感じながら、彼女は廊下を急ぎ足で進んだ。


目的地は、シグマ・ステーションの下層にある古びたメンテナンスルーム。そこには彼女が知らない何かが待っているという予感があったが、今はハサウェイを信じるしかなかった。


ギギがメンテナンスルームに到着すると、すでにハサウェイが彼女を待っていた。彼は焦りを隠さず、彼女に急かすような視線を向けた。


「来てくれてありがとう、ギギ。時間がない、すぐにここを出よう。」


ハサウェイはそう言いながら、彼女をモビルスーツの格納スペースへと導いた。そこには、巨大なΞ(クスィー)ガンダムが静かに佇んでいた。その威圧的な存在感に、ギギは思わず息を呑んだ。


「これで脱出するのね?」


ギギの問いに、ハサウェイは真剣な表情で頷いた。


「君をここから連れ出すために、これしかない。連邦軍がここに来る前に急ごう。」


ハサウェイはコクピットのハッチを開き、ギギを中に招き入れた。彼女は狭い座席に座り、ハサウェイが隣に座るのを感じた。彼の手が操縦桿を握ると、Ξガンダムのシステムが次々と起動し、巨大な機体が生き物のように動き始めた。


「しっかり捕まっていてくれ。」


ハサウェイがそう言うと、Ξガンダムは一気に加速し、メンテナンスルームの天井が開かれると同時に、シグマ・ステーションの外壁を突き抜け、宇宙空間へと飛び出した。


その瞬間、ギギは背後から迫る敵の存在を感じ取った。連邦軍のモビルスーツが追跡してくる。彼女は不安を抑えきれず、ハサウェイに問いかけた。


「追われているわ…!」


ハサウェイはその言葉に冷静に応えた。


「大丈夫だ、俺たちは必ず振り切る。」


彼はモニターに映る敵機の動きを見極めながら、巧みに機体を操った。Ξガンダムは激しい機動でビームを回避しながら、反撃のタイミングを狙っていた。


「行くぞ!」


ハサウェイが叫び、ビームライフルが火を噴いた。敵モビルスーツが次々と撃破され、光の残像が宇宙に広がった。ギギはその光景に息を呑みつつも、ハサウェイの冷静さに安心感を覚えた。


「もう少しで安全圏だ…!」


ハサウェイの言葉に、ギギは無意識に彼の手に触れた。彼は彼女に微笑みを返し、再びコントロールを握りしめた。


最後の敵機を振り切り、Ξガンダムは一気にシグマ・ステーションから離脱した。宇宙の静寂が二人を包み込む中、ギギは深い息をつき、ハサウェイに感謝の言葉を伝えた。


「ありがとう、ハサウェイ。あなたがいてくれて…本当に良かった。」


ハサウェイは微笑みながら、彼女の言葉を受け止めた。


「これからは一緒だ、ギギ。どんな未来が待っていても、俺たちなら乗り越えられる。」


ギギはその言葉に力強く頷き、ハサウェイの隣で新たな旅路を共に歩む決意を新たにした。Ξガンダムは静かに宇宙の闇の中へと飛び去り、彼らの前には無限の未来が広がっていた。

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白百合の影 〜ギギ・アンダルシアの孤独な誓い〜 湊 町(みなと まち) @minatomachi

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