頭文字S

 私自身は免許を取るまであまり興味はなかったのですが、周りに車好きバイク好きが多かったので、時々色んな車に乗せてもらっていました。

 私の友人は運転が大好きで、マツダ・ロードスターに乗って田舎道をかっ飛ばす女でした。愛読書は「頭文字イニシャルD」や「湾岸ミッドナイト」だったに違いありません。(知らんけど)

 そんな彼女に免許を取ったと報告したら、早速愛車を運転させてくれることになりました。なんという命知らず。さすが心の友よ。


 何せ二日で廃車にしたワタクシ。実力を知ったら白目を剥きますわよ。


 コンパクトで軽量なライトウエイトスポーツカー。コンセプトは「人馬一体」の走り。カッコいい緑のオープンカーに初心者マークをぺたり。

 ちょっとばかり初心者には難易度の高い車でしたが、友人が隣に乗って色々教えてくれたので、公道を走るのも安心でした。スポーツドライビングに重点を置いている為、運転していて非常に楽しい車です。

 私達は幌を上げて、「うぇーい」とパリピな走りを堪能いたします。女二人で乗っているせいか、時々不埒なヤカラがナンパをしてきますが、中指を立てて走り去ります。(良い子は真似してはいけません)


 わぁぁ! スポーツカー速ぁぁい。(/・ω・)/


 しかし他の車と比べると、ロードスターのギアとハンドルは重いように感じました。私は右折の為に交差点に入り、そこで直進車が通過するのを待っていたのですが、いざ発進となった際にエンストしました。後ろからクラクションを鳴らされるし、そうこうするうちに赤信号になってしまうしで、かなり焦りました。

 「ぎゃー!」と叫ぶ私に、友人は慌てず騒がず冷静に対処法を教えてくれました。赤信号のうちに持ち直し、半泣きになりながらもなんとかその場を離脱した私は、車の来ない道路わきに停め、友人と運転を交代してもらうことにしました。


 すまぬ、すまぬよう。みんな右折レーンが悪いんだよう。道路は目的地まで全部直線で結ぼうよう。(暴論2)

 だから「外(公道)で運転しない方がいい」と教官に言われたと最初に言ったではないか。友人は白目こそ剥きませんでしたが、いくぶん青ざめた顔で十分に納得したようでした。


 その後、彼女の安定した技術でショッピングやドライブなどに度々出かけましたが、私に運転を任せてくれることは二度とありませんでした。


(ノд-。)クスン(ノд-。)クスン


 あ、タイトルのSは白目のSです。エンストのEでもいいですけどね。


(ノд-。)クスン(ノд-。)クスン


 自分で言ってて悲しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る