筋力は申し分なし

 若い頃は細身ではありましたが、筋トレが趣味だったので、バイク教習の初日にやる「車体の引き起こし」は、難なくこなせました。

「お嬢ちゃん、大丈夫かい」と、ニヤニヤするオッサンやヤンキー共を尻目に涼しい顔で起こしてやりました。乾燥重量180㎏程度、軽いものです。


 まずエンジンを切った状態にして、ハンドルを倒れている方向に切ります。バイクが左側に倒れた場合は、フロントブレーキが握れないので、シフトペダルを押してギアを一速に入れます。起こす時にタイヤが回らないようにする為です。

 掴みやすい場所を掴んで膝を車体の下に入れます。体全体で車体を抱えるようにして、太ももや背筋などの大きな筋肉で勢いも使って起こすと良いでしょう。腕の力だけで起こすのは、多分女性や非力な人には無理です。前に押すように起こすのがコツです。

 右側に倒れた場合も要領は同じですが、サイドスタンドを立てておくと、勢いで反対側に転倒するのを防げます。

 教習所のバイクは起こしやすいようになってますが、路面で立ちごけした時などにも使えるので、これからバイクの免許を取る人は覚えておいた方が良いと思います。


 しかしこれがまた立ちごけするんですよね。体が軽かったので、疲れていたりすると重みに耐えきれず、バイクが止まったタイミングでこけたりする訳です。

 これはアカンと思い、筋トレの量を増やしました。独房で懸垂するサラ・コナーの如きストイックさで鍛えまくりました。(例えが古い)

 しかしあまりに筋トレし過ぎて、一時期は逆三角体型になり、髪も短くしたので少年のようだったと思います。

 本当はヘルメットから「ふぁさっ」と零れる長い髪、というのに憧れていたのですが、実際は蒸れるし邪魔くさいので諦めました。


 そんなある日、部屋で着替えていたら、姉が入ってきて「きゃー!!」と悲鳴を上げました。

 逆三角体型の短髪の男が妹の部屋に侵入していると思ったそうです。姉も忙しい人なので、数日顔を合わせないこともあったし、その反応も致し方なしです。


 あ、別に鍛えなくても乗れますけど、筋肉はあった方が安定して走れると思いますよ。

 私が教わっていた教官は、しつこいくらいに「太ももでタンクを挟んで締めろ! 乗馬と同じだ!」と言っていました。乗馬はやったことないですけどね。馬ならまだ意思疎通ができる気はします。

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