第8話「バトル!」
その場所は住宅街の一角であるが、異様な静けさに包まれていた。
2人は物陰に身を潜めていた。
タッ……タッ……。
白いワンピースを着た黒い髪の女の歩くのが見える。
「あれが口裂け女のようだな……」
ボソッと雅也が呟く。
「……で?どうやって退治すんだ?」
「俺の忍術で不意打ちする」
そういうと雅也の近くと口裂け女の後ろに黒い靄が発生する。
そして、内ポケットに忍ばせておいた短刀を靄に突っ込んだ。
口裂け女の背後の靄から雅也の短刀が現れ、うなじを掻っ切る。
口裂け女は叫び声を上げ、うなじを抑えながら倒れる。
雅也はその様子を見て顎を撫でながら言う。
「さすがに死なねえか。よし突撃だ。こい」
手で合図しながら口裂け女の元へ走っていく。
雅也の忍術に首をかしげながらもとりあえず口裂け女の元へ突撃する。
女が向かってくる2人に気付き、睨みつけ、持っていたナイフで襲い掛かろうとする。
雅也は何も言わず、燃える足でけりを入れた。
「忍法火遁の術 壱型」
2メートルほど女の体が吹っ飛んだ。
「す……すげえ」
仁平は思わずボソッとつぶやいた。
めきめきと仁平の背後から聞こえた。
音のする方を振り向くと、地面のアスファルトがナイフ状に変形し、宙に浮いていた。
刃が仁平の方を向き、襲い掛かる。
いくつかはかわすことができたが1本は肩に刺さってしまい、痛みで倒れる。
「ウ……ウアア!」
「服部!」
雅也がそう言いながら仁平の方を振り向いた瞬間、雅也の背後にも仁平を襲ったアスファルトのナイフが現れた。
ナイフが雅也の頬をかすめる。
「ア……アアアア……アアアアアア!」
女は立ち上がりながら、叫び声をあげる。
見くびっていた。
楽に倒せる相手だと思ってしまっていたことを後悔し始めていた。
仁平はナイフを抜き火遁の術を使い、傷口を塞ぐ。
その間も、口裂け女は不気味に笑いながら雅也に容赦なくナイフを投げつけてくる。
「アハ、アハハハハ」
雅也はナイフ群を短刀ではじいて防御するので手いっぱいで距離を詰めることができない。
それどころか、どんどん距離が遠のいていく。
ふと、背後を見るといるはずの仁平がいない。
しかし、彼は女の背後に回っていたのだった。
「忍法火遁の術 壱型!」
叫びながら、燃える手で口裂け女の頭を殴る。
「行け!木下!」
女は一瞬、よろけると、雅也は一気に距離を詰め、短刀で斬りかかる。
血が一気に噴き出す。
しかし、女も最後の力をその血はナイフの形になり、雅也に襲い掛かった。
「木下!あの忍術を使え!」
雅也はハッとした表情を浮かべ黒い靄をナイフを包み込むように出す。
ナイフは黒い靄を通り、口裂け女の体を貫く。
女は倒れると黒い粒子となり、消滅した。
戦いが終わった後、雅也は安堵し、仁平のもとに向かった。
「……助かった」
雅也は座り込む仁平に手を差し伸べる。
「そこはありがとうだ」
仁平は手を取り立ち上がった。
2人の間に小さな友情が生まれた。
服部仁平の妖怪退治 耳鼻毛 @ahijo_NEO
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