第3話最終回:愛とはちがう

 彼女と出会ったのは6人目の彼女をストリートファイトをしていた頃にナワバリ争いで闘って勝った後にられた後だった。



 7人目の彼女と聞くと俺がいかにダメなおんなったらしに思われるか気になるが力が全ての世界で生きてきてしまったからこその経験だから誰にも否定ひていされたくないし肯定こうていもされたくない。



 今日も依頼をいつも通り自分の手を汚さず仲間に全てやらせた後だった。



隔世ようが?うそでしょ? 」



 たまたま後処理あとしょりが終わったあとだから良かったもののかつて別れた7人目の彼女があらわれた。



 どれだけドラマチックな戦いや争いに勝利し、何度も女性関係とえんがあった俺だが長続きしなかった。



 ハーレム願望がんぼうは歴代フィクションの男性主人公よりずば抜けていると言ってもいい。




 久しぶりに表の世界で生きる人間と話せるのはラッキーだったが仲間には『少しよる店』があると伝えて彼女と共に適当てきとうな店へ入った。




 注文はおたがい安いドリンクをたのみ、しばらくはにらみあっていた。



隔世ようが!何度も連絡したのになんで放置?また戦いに明け暮れていたとか? 」




 言い忘れていたが隔世ようがは俺の名前だ。

 ガベルに所属して慣れすぎたからか名前を言わなくてもいい生活ばかり送っていたからか無視しようと思えば無視は出来た。




 7人目の彼女とはストリートファイトをやめた後に知り合った。

 ただ過去は話していたからか俺については俺よりもくわしいかもしれない。




 だから会話に困っていた。




壮絶そうぜつな人生を歩いてきたんだ。連絡が取れなくなることくらいいくらでもあるだろ」




 俺がぶっきらぼうにしか話すことができないのは昔と変わらない。




 そして彼女も勝気かちきで力が強い相手でも普通に話せるのも変わらない。




「仕事の関係なのか、仕事を探しているのか正直分からなかった。まさか上京していたなんて知らなかった。何から何まで秘密にするなんておかしい」




 7人目の彼女とは別れたわけではなかった。

 むしろスカウトされたタイミングと付き合うタイミングが最悪過ぎて俺の中でも勝手に別れたと思い込んでいた。




 そりゃ怒りくるうだろう。




 それからは一緒に住みたいと何度も彼女はたのんできた。

 収入的にも問題はないがガベルは表の連中とは一切の交際こうさいなどを認めていない。




 仲間意識なんてものはないがさすがにガベルを抜けたあとのことまでは考えがおよばなかった。

 それが俺をしばっていたようだ。




 ここでガベルからの連絡がやってきた。

 後処理をサボったことを指摘されるかと思ったら新規の依頼がやってきた。




 しかし依頼内容は今までとわけがちがった。




 俺は急いで代金をはらい、彼女の手を引いて逃げた。




 依頼内容は『彼女の抹殺まっさつ』。

 理由なんて今更何だっていいだろう。




「なんで逃げる?ちょっと説明し……」



「しっ! 」




 位置情報を切ったところでガベルからの追跡ついせきからは逃れられない。




 人から彼女は恨まれた。

 ただそれだけ。




 それにたいして社会や世界のせいにはしない。

 殴ったら殴り返される。




 それだけのこと。

 だが納得は出来ない!!




「いいか!俺がお前を守る!だから何も言わず逃げろ! 」




 彼女は何が何だか分からないと言ってきたがガベルの仲間達……いや、敵がこちらをにらみつける。




「はやく逃げろ! 」




 彼女に攻撃させないようかつての仲間から敵へと変わったガベルがおそいかかる。




 彼女は何も言わずに逃げ出した。




 とにかく敵からの攻撃を交わして反撃はんげきし、久しぶりに戦いに目覚める。




 死んでも守る!

 そして目覚めた俺は戦いを楽しみながらリスクを恐れることをやめた。




 もう俺にこの先の未来はない。




 ガベルを何度も抜けようとしても誰も教えてくれない倫理観りんりかんが支配する世界でまともに生きていける気はしない。




 ガベルに入ってから何も攻撃しなかった俺が敵と戦って血を流している。




 戦いで死ねる。

 そして彼女を守る。




 死ぬのはお前達をたおしてからだ。

 それまで絶対に倒れるものかぁぁぁぁぁ!!!





 一方、先ほど逃げ続けている彼女は涙が止まらなかった。

 隔世ようがは何かと戦っている。




 そしてまだ自分を意識してくれていた。

 だから彼女は覚悟を決めるしかなかった。




 それまで暮らしていた日常が自分の味方をしてくれないのはもう分かった。




 だから、だからどうか隔世ようがは生きて!




 彼女の願いはただそれだけのみだ。




 そしてまた過去を聞かせて欲しい。

『いつもメンチ切られてさあ』って当たり前のように非日常を聞きたい。




 かなわないなんて簡単に言わせない。



 彼女はただ彼がやってくるのを信じて逃げ続ける。



 結末は決して考えないように。


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たおしたあとは誰が残す 釣ール @pixixy1O

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