第19話 夏の挽歌



近くに居た太陽が

少しづつ遠くなっていくように思った日

風が吹き緑の葉を舞い上がらせ

ぽつりと銀色の雫


それでも枯れないようにと

花に水を上げようと蛇口をひねると

熱気を帯びていた水は無くなり

少し冷たい水が出てくる


暗くなってきたかなと思えば

やがて空には闇が忍び寄り

更に強くなった風に

水滴が無数の投擲となり

家々の屋根を激しく叩く


一瞬の風と雨は

夏の終わりを告げようとしたのか

夜風冷たく雨戸閉ざした明くる日に


去り行く太陽が

手を振ってゆっくりと遠のいていく朝で

もう終わりさと声を掛けてくる



   完

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限りなく白に近いオレンジの太陽 織風 羊 @orikaze

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