第18話 葡萄の樹



 少し飲み過ぎたかなと

瞼を腫らしながら起きる休日

いやいや眠り過ぎただけだろうと

反省材料を消し去ろうとする


 今日から来週にかけて

どんなイベントがあるのだろうかと

暦を見ながら思案すれば

娘が下宿先から帰って来ると教えてくれる


 はて?

何のために帰って来るのだろうかと


 娘は何んで帰ってくるの?


と尋ねれば


 夜行バス!


とチグハグな質問にチグハグな答えが返ってくるチグハグな会話


 庭に出れば

この猛暑を乗り切った大きな緑の葉

ヒヨドリに実を食べられて

紫の実を無くしてしまったデラウエアー


 暑い太陽の日差しを浴びながら食してみれば

今年もかなり甘く育ってくれたと感じる葡萄は

娘が生まれた時に買った記念樹


 毎年薬をあげないので

種無し葡萄にはならず

誰も食べない甘い種有り葡萄を食べた日に

高く遠い青を見上げて思ったこと


 酷く暑い日に

雨上がりの空に橋が架かれば

この世界が夢で

向こう岸にある世界が現実だと思わせくれた


 まるで目の前に薄い膜が張っているような

違う世界に生きている夢追い人は

少し笑いながら首を振って

目的のない世界で

虹の向こうへ行こうと

ここにある時間の中で

再び歩き始めてみようとしている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る