第20話
アランパーティーは6.5階から出て次の階へと上がった。
皆の目に初めて入ったのは石柱だった。
大きくて危険な柱が近くから遠くまであちこちに広がり、天井を支えていた。
(天井の規模が空みたいだ。高さは20メートルくらいだと思うが。)
7階はこれまで踏破した階とは違っていた。
これまで他の階は道が窮屈だった。
両側が石壁で塞がれ、前しか見ることができなかった。
今回は反対だった。
左を見ても右を見てもすっきりとしている。
前に広がる道は以前のように一つであり、その両側には代わりに断崖が位置していた。
ダンジョンはもはや通路式ではなかった。
生徒一人が遠方を指した。
「かすかな霧が晴れたら、かなり遠くまで見ることができそうだね。」
その言葉通り、7階は都市が一つ入る大きさだった。
石柱でぎりぎりに構えている巨大地下鉱山がまさに7階だった。
「道はどうせ一つだ。気をつけて進もう。」
アランはパーティーの先頭に立った。
道の幅はゆったりとしていた。パーティーが横2列になっても十分に進むことができた。
しかし、アランはパーティーを4列になって前進した。
アランの判断は最初の戦いですぐに功を奏した。
人くらいの大きさのコウモリモンスターが霧の間から飛び出し、アランパーティーを襲い始めた。
不意打ちを食らった生徒の何人かは、陣形から強制的に離脱することになった。
巨大なコウモリの襲撃によって元の場所から遠ざかってしまった。
「ああっ···。」
押し出されてやっと止まった場所は絶壁の近くだった。
アランの助言なく2列で進んでいたらどうだっただろうか。
下が見えない真っ暗な絶壁の下に急に落ちていただろう。
アランパーティーのみんながこの点を感じた。
(アランの感覚が今、最高潮に達したみたいだ。)
みんなが再びアランの指示に耳を傾けた。
アランは今最高のコンディションを維持していた。
アランはすぐに攻撃を指示し、すぐに戦闘が起こった。
空中防御は苦手だったが被害がなく、空中攻撃は火力が足りなくてもモンスターの胴体に正確に命中した。
空中から来たモンスターを初めて相手にした割には優秀な対応だった。
戦闘は長く続いた。
パーティー全体が息切れする頃になると、巨大なコウモリ8羽が地面に落ちた。
襲撃してきたモンスターが全員死体となって床を転がった。
「経験値がすごいな。かなり大変ではあるけど。」
アランパーティーは一息つく余裕があった。
その中で博識なラベンダーが状況を整理した。
「今出たのは人間狩りのコウモリ、本には39レベルと書いてある。でも色が赤くて体が大きいのが少し気になるわ。」
ラベンダーはふとインモラルの言葉を思い出した。
するとコウモリの死体がラベンダーの手で分解され始めた。
ラベンダーは皆が聞くことができるように言った。
「人間狩の赤いコウモリ、レベル44。普通の人間狩のコウモリと違って、人間の血を吸うと人間の形になるみたい。」
パーティーのみんなが耳を疑った。
ぞっとするような表情はその次だった。
パーティーが少し騒然としている間にアランは尋ねた。
「すごいですね!どうしてそんな情報が分かったんですか?」
「ひっ、校長のおかげよ。昨夜のアドバイスをそのまま使ってみたけど、やっぱりそうだった。これからモンスターの把握は私に任せて。」
「心強いですね! では、コウモリのスタットも調べられますか?」
「フフ。当たり前でしょ。」
コウモリのスタットはラベンダーによってすぐに分かった。
アランは冷静に自分のイメージを描いた。
ラベンダーが言った情報のおかげで戦略を立てやすくなった。
相手をすべきコウモリのレベル44~45。
敵は空中型モンスターで、レベルに比べて敏捷スタットが高かった。
機動力が優れているのもこのためだった。
その逆に体力は平均より少ない。
自分たちのパーティーの現在の平均レベルは魔法専攻が「36」で、剣術専攻が「34」だ。
したがって、敵との純粋なレベル差は8~10だったが体力が低く、実際のレベル差は4~6だった。
(戦術さえ発揮できれば…)
難しい敵ではない。
アランはそう結論付けた。
そして、攻撃を致命的に的中させる方法を思い出した。
「うむ、レイス!ちょっと出てきて。」
アランはパーティーの後ろに向かって力強く叫んだ。
パーティーの一番端にいたレイスが一目散に先頭へと出た。
「そりゃそうよね! 私がいないとダメよね? 私を使いなさいアラン!」
アランはくすくす笑った後、指示した。
計画自体は難しくなかった。
偵察に優れたレイスが先に行ってモンスターを誘ってくるのだ。
全階でもよく使う方法だった。
「ただし、モンスターが僕たちの正面に来るように高さを調節しなければならない。」
「難しい注文をするわね。下手するとあなたたちとぶつかるかもしれないわよ?」
「大丈夫。その被害は僕が必ず受けるよ。」
レイスはやってみると言って霧の中に消えた。
同時にアランはパーティーを落ち着かせた。
陣形はすぐに4列に整備された。
アランが先頭に立って歩くと、皆がゆっくりとその後を追った。
都市一つが十分に入るほどの巨大な地下鉱山。
アランパーティーはその真ん中の曲がった一本道を進んだ。
奥に行くほど濃くなる霧のせいで、地面をよく見なければ絶壁に行きがちだった。
しかし、アランはミスをしなかった。
線でも見えるかのように正確に一本道の真ん中を歩いた。
そうしてある程度進んだ瞬間だった。
アランは前方の遠くの霧を注意深く見てぴたりと立ち止まった。
他の生徒の目にはそこに何も見えなかった。
それでもアランパーティーの生徒たちはみんな体勢をとった。
アランが体勢をとったから。
しばらくして、霧の間からレイスが嘘のように飛び出してきた。
その後ろには赤いコウモリがついていた。
誘引に成功したのだ。
ただ、数字が前の2倍はいて、16羽にもなった。
(負傷を避けることは難しそうだ。)
ほとんどの生徒がそんなことを考えていたときだった。
アランは突然前に飛び出した。
レイスはアランに向かって飛んでいき、地面の下にすっと消えた。
赤いコウモリのターゲットはあっという間に人間に変わった。
狙われたアランが赤いコウモリと衝突する寸前だった。
「はあっ!」
アランは目の前でモンスターと向き合い魔法の防御幕を開いた。
インモラルが教えてくれた半球の防御膜に赤いコウモリが体を打ちつけた。
アランに激突したコウモリはなんと3羽。
その後、再び3羽のコウモリがぶつかってきた。
普通の魔法使いであれば押されてこそだった。
しかし、アランは筋力スタットが剣士と同じくらい高い状態だった。
しかも基礎訓練も他の人よりも一生懸命取り組んでいた。
結果が格別であるしかなかった。
アランは人並みのコウモリが6羽もぶつかってきたにも関わらず、その場でしっかりと持ちこたえた。
「さあ!やり方はまったく同じだ!」
アランが叫ぶと、パーティーのみんながその言葉をすぐに理解した。
戦術自体は基本的に変わったことはないという意味だった。
大きさや速度が優越なモンスターはまず防御膜で足を縛り、その隙を狙って一斉攻撃をするという方法だった。
パーティーが一心不乱に動いた。
「手ぬるいやつはアランに話しかけようなんて思わないで!」
いつの間にかアランにぶつかったコウモリ6羽。
その他の残りのコウモリ10羽がアランが広げた防御膜に向かって突進してきた。
(あの数だと負けそうだ…! )
しかし時間を稼ぐ必要があった。
パーティーが戦術を使えるまでコウモリの足止めをしたかった。
アランが歯を食いしばる瞬間だった。
間違いなく残りのコウモリたちがぶつかってくると思った。
アランのそのような予想とは異なり、残りのコウモリがぶつかったところはまた別の半球の防御膜だった。
「どんっ!」
アランは目を大きく見開いた。
新しい防衛幕を開いたのは同じパーティーの生徒たちだった。
アランの予想よりパーティーメンバーの動きがはるかに速かったのだ。
戦術は滑らかに流れ続けた。
アランは防壁に完全に守られ、パーティーの剣士たちは防壁にぶつかったコウモリを簡単に切り裂いた。
鼻をつくような血のにおいが広がった。
コウモリの体力はものすごいスピードで減っていった。その度にコウモリの体と翼が切りつけられた。
生き残ったコウモリたちは急いで天井に向かって羽ばたく。
「キイィッ!」
結果は残酷だった。
上に飛んできたコウモリはすべて火炎に包まれた。
魔法専攻の生徒たちが一足先に火の玉を飛ばしたのだ。
結果はすべて的中。
逃げ場のないコウモリたちは再び地面に落ち、剣の軌道の中で残った体力を使い果たした。
地面がねっとりした血で染まった。
戦闘は終わり、被害を受けたのはアラン一人だった。
肩が少し腫れたアランは平気なふりをして、パーティーの女子生徒たちに「ありがとう」と何十回も言った。
パーティーが再び整う間、アランはこっそりポーションを飲んだ。
やがてレイスが戻ってきて、アランが叫んだ。
「このままゆっくり行けば問題ありません!」
誰もがアランの言葉を信じた。
パーティーはそうして7階の端に向かって出発した。
アランは心の中で意識を取り戻した。
(数日間ずっとポーションを使っていたせいで回復速度が遅い。だけど僕が倒れるわけにはいかないんだ。校長先生のように僕の背中も大きくなければ…)
曲がりくねった上に霧に包まれた道。
アランは以前のように上手く道を進んだ。
絶壁からは時々、奇異な風の音がした。
まるでこっちに来いと誘っているかのようだった。
アランは返事をしなかった。
アランはパーティーのことしか気にしていなかった。そして、これから出てくるモンスターに備えた。
アランの足取りは堂々としていて気概があった。
ただ、それだけ足跡が大きくなっていた。
責任感が高まっているのだ。
ザクッザクッ。
歩くたびに足跡は自然に積もっていった。
アランパーティーが7階に入ってきてからかなりの時間が経った。
まだ8階まで半分残っている状況の時、アランの些細な変化に唯一気づいた人がいた。
ダンジョンの外で映像魔法でアランを見守っていたインモラルだった。
(うーん。)
インモラルは観察力があった。
しばらくしてからだった。アランがつけているブローチから声が聞こえた。
「アラン。すぐそばにダリアを呼びなさい。ダリアと二人で進みなさい。」
アランはためらった。
「先生、7階のモンスターはかなり強いようです。ダリアが大きな被害を受けるのではないでしょうか?」
「視線が限りなく1ヵ所に集まれば、それがさらに大きな被害をもたらす。それが人の視線であれ、モンスターの視線であれ。」
難しい言葉だった。
アランはインモラルの言葉を完全には理解していなかったが、その言葉に従った。
まもなくアランパーティーで最も体格の良い女子学生、ダリアが先頭に出た。
「チッ、アランのお尻を見ながら歩くのが楽しみだったのに…」
ブツブツと何かを言うダリアはアランと一緒にパーティーの先鋒に立った。
重みのある2トップ体が形成された。
その状態で前進し、間もなくのことだった。
側面の霧の中から1匹のモンスターが飛び出してきた。
アランの反応が少し遅れてしまった。
レイスが誘引してきたモンスターでもなく、相手の奇襲速度が今まで出会ったモンスターの中で一番速かった。
7階の深部で遭遇した今回のモンスターは人間型だった。
人間狩りの赤いコウモリが人間型に進化していたのだ。
レベルは進化前より5も高く、機敏さが卓越していた。
アランのレベルでなんとか反応したのがむしろ不思議なほどだった。
アランは自分の被害を予感した。
(魔法を使うには遅すぎる!僕が体で受けないと!そうすればパーティーの被害が最小化できる!」
アランは決心を固めた。
その瞬間、耳に物凄い破裂音が聞こえてきた。
グァアン。
人間型コウモリがぶつかったところはアランの体ではなく、
ダリアの盾だった。
ダリアが熟練した盾打ちで人間型コウモリをつき飛ばしてしまった。
(そうか!教授は全部予想していたんだ!)
アランは心の中で感心しながら正気に返った。
遠くへ飛んでいった人間型のコウモリが立ち上がろうとしていた。
アランは意識を集中させ、誰よりも早く人間型コウモリに火の玉を飛ばした。
攻撃はきれいに的中した。
その後、パーティーの後続打がスムーズに続いた。
数十個の火の玉が人間型コウモリの体に突き刺さった。
熱い火炎が華麗に燃え上がり、人間型コウモリは体力が限界に近づくと絶壁の下にするするすると落ちた。
豊富な経験値が入ってきた。
次の戦闘によってレベルアップが可能なほどだった。
危険な状況は過ぎ去った。
パーティーから安堵のため息が漏れた。
その中でもアランは今回の状況で何かを学んだようだった。
ただ、これを正確に表現することができなかった。
パーティーが短時間で整備を終えて再び7階の終わりに向かって進む時だった。
アランのブローチから声が出た。
インモラルだった。
「感じたんだろうアラン。コンディションが最高でも、目の前の結果は分からない。」
アランは口を開いた。
自分が学んだ経験が明確に単語で整列されたのだ。
アランは尋ねた。
「先生、それでも私は柱になりたいです。」
「うん、わかっている。」
「では私がつかまなければならない原因は何ですか?」
「原因はその都度違う。それこそ、言葉にできない不確実なことだ。」
これはインモラルが会社を経営しながら学んだ知識だった。
「代表」という名の柱は、責任と負担を背負って毎瞬間起きる突発状況を解決する役目だったからだ。
インモラルが長く話した。
「ただ、私の場合は原因を解決する時常に経験が必要だった。これは人によって違うとだろう。誰かにとってはタイミング、誰かにとっては運の比重で原因を踏破するからね。」
アランはしばらく黙っていた。
「肌で感じろということですね。」
「そうだ。」
これだけ教えたらアランはきっと答えを見つけるだろう。
インモラルはそう考えて会話を終えた。
アランは歩きながらパーティーメンバーを見回した。
誰もが可能性を持った素晴らしい動機だった。
そして、自分にもそのような潜在力がさらに隠れていることを直感した。
アランの直感は正確だった。
単に意識していなかった。自分のステータスが何度も変化していることに気づかなかった。
名前:アラン
レベル:36 種族:人間
職業:自覚できない(進行率:90%) 名望:10
アランパーティーはいつの間にか長かった7階の最後に至った。
もう一度高層階に進む時が来たのだ。
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こんにちは。まず、ここまで読んでいただいた読者の皆様に心から感謝いたします。本作は第28話で第1巻が完結します。アランの覚醒、アデルの覚醒、そしてイモラルが非常に強力な相手と1対1で対峙するという展開が、あと8話以内に描かれる予定でしたが、ここで連載を中断することにしました。
本作は書籍化を目指していましたが、閲覧数の大きな変動がなく、あらかじめ準備していた連載を続ける意味がないと判断しました。もし楽しんでいただけたなら、本当にありがとうございました。
*もし書籍化の可能性があると感じられましたら、ぜひご連絡いただければ幸いです。
滅亡が確定しました。アカデミーの悪徳校長として生き残ります。 @5252kisama
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