第14話 元気な来客


 次の日の朝は、陽が高く昇ってもなかなか布団からでられなかった。


 昨日の壁とのやりとりが何度も頭の中でぐるぐると巡って、結局遅くまで寝付けなかったからだ。


 布団の中で丸くなっていると、威勢のいい声がいきなり室内に鳴り響いた。


「なんだカナミ姉ちゃん、まだ寝てんのか!!」


 将志お兄ちゃんゆずりのでかい声が、ぐわんぐわんと頭に響く。


 のそのそと布団から出て、将太君にひきつった笑顔を浮かべてみせた。


「お、おはよう……」

「姉ちゃん、なにその辛気臭い顔」

「う、うん……ちょっとね……」


 将太君に外で待ってもらい、急いで身支度をして外に出る。


 そして村の周りを二人で歩きながら、村の色んな所を見て回った。


 年が離れているから、一緒にいても楽しくないんじゃないかなとか思っていたけど、どうやら杞憂だったようですぐに懐いてくれた。


 姉ちゃんと呼ばれるのがくすぐったくて、一人っ子の私としては、とても新鮮なものだった。


 おそらく、将太君も似たような気持だったのだろう。


 その日は夕方まで将太君とひたすら歩き回ったおかげで、村の中は大体把握できたのだけど……明日の筋肉痛が想像に難くない。


「カナミ姉ちゃん、また遊んでくれよな!」

「そうだね。その時はもっと休憩しながらにしようね」

「だらしねえなあカナミ姉ちゃん! まあいいや、それじゃあまたな!」


 背を向けて家の方に走り去る将太君の姿は、まだ力が有り余ってるようで、子供の持つパワーを再認識させられる。


 私の子供のころ、あんな風だったっけか。


 ……いや、私はあんな風じゃなかった。


 私は人見知りで、運動が苦手で、いつもおばあちゃんの横にひっついていたっけ。将太君とは正反対だ。


 でも。


 でも。


 これだけは言えると思う。


 私も、将太君と同じくらいの年頃の時は、将太君と同じように、純粋だったんだと。

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