第4話 両親との再会


 目的の駅へと到着し、懐かしい光景が目の前に広がる。


 駅から実家へは、歩いて数分の距離なんだけど……。


 一抹の不安が頭によぎり、実家に向かうのがなんとなく億劫おっくうになってしまっていた。


 お父さんやお母さんに、なんて声をかければいいのだろう。


 今さらなんだけど、やっぱり気後れしてしまう。


 そんな情けない思いを振り払うために、カバンの中に手を突っ込む。


 ……チリン……。


 鈴の音色に踏ん切りをつける勇気をもらい、実家へと続く道へと歩みを進める。


 昔は駅まですぐの距離が楽でよかったのだけど、今では逆に憎らしく感じてしまう。


 実家の玄関の前まで来たところで、先ほどの情けない考えが頭に浮かび、玄関のドアに手が伸びない。


 どうしたものかと思っていた、その時。


 ガチャリ。


 不意に玄関のドアが開いたのだった。


「っ?! カ、カナミ?」

「お、お父さん……」


 お互いに虚を突かれた突然の再会に、何とも言えない気まずい空気が流れる。


 私もお父さんも、お互いにどう声をかけたものかと迷っていると、


「カナミ!!」


 お父さんの後ろから響くお母さんの声が、私とお父さんの静寂をやぶった。


「お母さん……」


 健康そのものだった半年前と変わり、目の下はクマだらけになっていかにも不健康そうな青白い顔色をしていた私の姿を見て、お母さんは絶句していた。


「カナミ……よく……よく頑張ったね……」


 そう言いながらお母さんは、私の手をしっかりと握りしめ、すすり泣きをはじめた。


 久しぶりのお母さんの温もり。


 だけど、それが今の自分の不甲斐なさをかきたてるような気がした。


 身体の底からこみ上げてくるものを我慢してうつむいていると、それを見ていたお父さんから頭をなでられた。


「もう、お前は我慢しなくていいんだ」


 お父さんのその一言で、必死にこらえていた感情が爆発した。


 お母さんの手を強く握りかえし、大声で、ひたすら大声で泣いた。


 そんな私を、お母さんは一緒に泣きながら優しく抱きしめてくれ、お父さんは静かに見守ってくれた。


 ひとしきり泣き終えた後、母さんにうながされ家の中へと入り、荷物を自分の部屋へと持って行った。


 まるで主人の帰りを待っていたかのように、チリ一つない小綺麗な部屋の様子に、思わず私は苦笑した。


「きっと、お母さんね」


 昔だったら勝手に掃除されると煩わしく感じたものだけど、今はただ感謝の念しか浮かばない。


「ありがとう。お母さん」


 面と向かっては言えない感謝の言葉をつぶやき、荷物の整理をはじめた。

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