第16話 道雪 筑前征伐抜 岩屋圍③龍造寺隆信降参
今回の話は、大友記のパクリですが、内容が破たんしているので最後にパクリ元を掲載します。
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そこへ毛利元就が
「みずから将として吉川・小早川を先陣に九州に押し渡り佐賀・秋月・宝山の後攻すべし」
と沙汰あれば、宗麟は大いに驚き、急ぎ肥前を静めようと一万田鎮成を代将に、臼杵式部丞を一方の大将として木付・国崎(=国東)利光・大鶴・古庄・その他の肥後の国士を加えて1万5千余騎肥前国へ差し向けた。
だが 永禄10年10月28日に夜戦(があり)利あらずしてことごとく討たれた。
このことが露見すれば太宰府に在陣していた豊後勢 吉岡宗観・斉藤鎮実を両大将にして志賀・清田・田原・一万田等がことごとく我も我もと出陣し、肥前国へ押し入って佐賀城を囲んだ。
また豊後に急を告げれば宗麟は大いに驚いて
「(龍造寺)隆信が蜂起すれば高橋・秋月が力を得て、その上 元就が後攻するならばゆゆしき大事である。しかしながら毛利は海を渡るまえに両国を征伐するだろうが、3将は秋月にある。ならばその他の一族を差し向けてはかなうまい」
と、田北・佐伯を始めとして宗徒の一族11人に肥後筑後の勢を添えて肥前の国に指向けた。
肥前の国士も少々馳せ加わり、旧冬より今山在陣の吉岡・斉藤の勢と合わせて5万騎で佐賀城を稲麻のごとく囲んだ。城中にも勇猛邪知の隆信が大勢を従えて死を極めて籠もっていたので折々に強く攻めたが弱る景色もなかった。
・・・・・ここから内容破綻(最後に解説を載せます)・・・・・
そのあと宗麟が大軍で筑後国に出陣して高良山を本陣として吉岡に力を添えた。
吉岡は矢文を作り古館・八戸・犬塚の方へどっと射させた。
古館・八戸・犬塚はこれを隠さず隆信に見せて
「この書について、こちらから一方便したまわん(=偽書状を逆用しよう)」
といえば、これを聞いて隆信が言うに
「謀計は愚将弱敵に用いて我が士卒を労せずして戦に勝つものである。智将強敵に用いる時は必ず我が勢が敗するものである。吉岡斉藤は老巧の勇将で、無用の働きをするよりは城を堅固に守って毛利の援兵を得て運を開くべし」
と言って2人を疑う気色はなかった。
そうでありながら3人とも不審が生まれ安心できなくなった。
隆信はつくづく思案して
「大敵にからまれ、味方の将帥は疑いをもつようになった。毛利の援軍はいつ来るのだろうか?そのうえ秋月は戸次、臼杵、吉弘に攻め落とされ古所山の危うい事、累卵に異ならない。また高橋鑑種も木付鑑実・森鎮実に押さえられて国中に出陣できない。ひとまず降参して時節を待ち、本懐を達しよう」
と降参を乞い人質を出した。
隆信一族は残らず久知縄岳で豊府の諸将へ降礼をすれば、吉岡・斉藤は太宰府に陣変えした。
種実はこれを聞いて「毛利の援軍が来る前に隆信が降参すれば、高橋とて堪え難いだろう」と思い、特にこの間の連戦で道雪に仕付られ恐れをなしている。
時節を伺い本意(=大友に復讐する?)を達するべし。と3将にしきりに降伏を乞うたが3将は許容しなかった。
種実はもとより宗麟の幸臣 田原一党と親族なので田原紹忍を頼り嘆けば宗麟の許しがあって人質を出して、斉藤勘解由左衛門の首を切って亡き父 文種の遺跡を賜って降参すれば道雪、鑑速、鑑理は先ず軍用を整えて、重ねて鑑種を攻めるべしと筑後国へ討ち入った。
■■■■■■■■■■解説■■■■■■■■■■■
大友記から伝統的に記述される龍造寺隆信と吉岡長増の心理戦です。
この話はあまりにも書き続けられて有名だったのか、本作では重要部分を全て省略しています。読者への説明を書いたあまりにも不親切な文書なので原文となった大友記の話で補足します。
『(大友軍は)柵を結い、矢軍で取り囲み吉岡は隆信家来の古飯播磨、八重、犬塚ら3人が隆信を恨んでいると聞き、矢文を打ち込んだ。
「このたび隆信殿が御屋形様に背いたのは全て欲深さによるものだ。利(道理?)によって戦えば勝つが、邪欲で戦えばどうして勝つことができようか?隆信殿を見限ると申された事は少しも不義ではない。こちらが攻めるとき手引きして頂くことは御屋形様にも伝えているのでおっつけ日時を知らせる。褒美は望みのままなので協力を願う
古飯播磨守、八重、犬塚へ 吉岡宗勸」
と書いて夜に播磨の役所へ射た。
矢文を見つけた見回りの者が隆信に届けたが隆信は思慮深い戦名人なので偽手紙を見抜き破り捨てた後、古飯播磨、八重、犬塚を呼ぶと
「その方三人が寝返るとの矢文が来たが、それがしは嘘だと思い少しも心配してない。忠誠を尽くされよ」
と言い何でもないように振る舞っていた。しかし『偽りの矢文なら(わざと見せるために)他人の持ち場に射こむが、今回は本人の陣地に射こまれた。偽りではなく、偶然見回りが見つけられただけではないのか?』と(主張する)一族の者が多く、隆信も心もとなくなった。そこで(大友家に)降参を請いて人質に龍造寺豊前守を差し出した。』
以上、「信頼している上司と家臣の間に疑心を持たせるため、本当に裏切ったかのように上司の陣地では無く、家臣の陣地に寝返り相談の手紙をたくさん撃ち込み、偶然拾わせる事で真実味を増そう」という心理戦を書いたものが大元です。
これを極限まで省略して意味が分からなくなったのが本作の話と言えるでしょう。
なお、龍造寺はこの一年後にまた反乱を起こしており、8月には今山合戦と呼ばれる大友家が夜襲で敗れた話がありますが、本書はそれらを混同して反乱は一回で終わったように書いているようです。
また秋月は国東田原本家の田原宗亀の親族であり、本家から分かれた武蔵田原家の紹忍とは別系統の田原です。
これは、後に佞臣と呼ばれる田原の失敗にして悪役に仕立てる下地づくりでしょう。
立花家とは関係ない話ながら、御隣の龍造寺を一度は降伏させたという説明をしないと、筑後の戦いでの隆信の卑怯さが伝わらないので、かなり手抜きをして入れた話と思われます。
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