異変
自転車を器用に動かしながら、悠里たちは街を出た
家から海までそう遠くはなかった。
「後10分で着きそうだな。」
「ああ、楽しみだな。」
智也とそうやって話しながら、海辺まで自転車をこいていった。
「にしても、今日は桁違いに暑いな。ほんと病気になりそうだぜ」
智也が汗ダクダクで言う。
「確かに今日は異常なくらい暑いな。地球温暖化の影響で気温が上がっているとはいえ、ここまで暑いとはな.....。」
悠里の言うとおり、この日はとても気温が高かった。
テレビでは連日真夏日だの、熱中症だの騒がれているがこの日は災害レベルだと思うくらいに暑かった。
悠里が信号待ち中にスマホで今日の気温を調べると、そこには46度と書かれていた。
「マジかよ....今日46度なのかよ。そりゃ異常なくらいに暑いわけだ。」
「46度!?おいおい太陽さんよぉ、頑張りすぎやないですかね。」
「はは。確かにな。いつもは僕たちを照らす太陽さんも頑張って照らしてくれるんだろうけど、人間が耐えられるくらいにして欲しいもんだぜ....。」
二人はこんな話をしながら海辺まで近づいていく。
すると、その時のことだった。
突然悠里と智也の目の前の映像が歪み、激しい頭痛が襲ったのは。
「なっ...痛え!なんだ、この頭痛は!?突然、目の前が歪んだと思ったら激しい頭痛がやってきた....。」
「ぐっ....痛いな。どうする?帰る..........か?」
悠里が言いかけると突然ノイズが聞こえた。
「な、なんだこの音。」
ノイズは長く続いたかと思えば、ピタリと鳴り止んだ。
それと同時に目の前の歪みは消えた。しかし、次に目に入ったものは信じられないものだった。
「なんだここは.....。こういう場所きた覚えがないぞ。」
悠里の目に映っているのは、先程そこにいたはずの信号やお店がなくなっていた。
代わりにあったのはたくさんのビルがそこいらに建っており、空は全体的に赤く、もやがかかっているかのようだった。
さっきまでいた多くの人だかりはなくなっており、それに加えて車の音も聞こえなかった。
周りを見渡すと自転車に乗って頭に手を乗せて目を閉じながら痛がっている智也がいた。
「お、おい。智也、目を開けてみろよ。僕たち、変な場所に迷い込んだみたいだ。」
「え?何言ってんだ。そんなことは.....寝てがら.....い....え?」
智也は目に映るものを見たまま、呆然としていた。
そりゃそうだ。さっきまであった街並みや多くの人たがりがなくなって、多くのビルが建っていたら誰だって呆然すると悠里は思った。
「ど、どこだよ....。ここ。俺たち、さっきまで海辺にきてたじゃないか。」
「それは僕も言いたい。目の前が歪み、頭が痛くなったと思ったら知らない場所にいるんだもん。」
「はは....夢だな。じゃなきゃ、こんなことありえない。悠里、殴ってくれ。ここが夢なら痛くないはずだ。」
「え。そう言うなら....。えい。」
悠里は軽く智也の頬を殴った。
すると、智也は痛そうな顔をした。
それを見て悠里はここは夢の世界じゃないと悟る。
「そんな.....。ここは夢じゃないのか。」
「信じたくないが、そうらしい。」
智也は悔しそうに顔をしかめた。
「さて....。どうしたものか。」
「とりあえず、探索してみよう。もしかしたら、人がいるのかも。」
「ああ、悠里の言うとおり人がいるかもしれねえからここはどこか聞いてみるか。」
二人は一回深呼吸をしたのち、ペダルを漕いだ。
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