探索
悠里たちはしばらく、自転車を漕ぎ続けた。
この世界に自分たちの他に人がいることを信じて。
「はぁはぁ。かれこれこき続けて1時間。全然人に会わないぞ。」
智也が不満を漏らした。
「もうこの世界には僕たちだけなのかもしれない。この世界は本当になんなんだろうね。」
悠里は今も赤い空を見ながらそう言った。
この世界に迷い込んでからかれこれ、1時間が経った。
これと言った進歩はなく、ただ誰もいないという事実があるだけだった。
すると、突然智也がこう言った。
「お、おい。なんか今聞こえなかったか!?」
「え?」と僕は疑う。
「ほら、耳をよく凝らしてみろって。」
「なんの音がしたの?」
僕は怖いながらも聞いてみた。
だって、怖いじゃないか。こんな世界に物音が聞こえるって。
もしかしたら、人がいるのかもしれないけど僕はなんだか嫌な予感がしていた。
「智也、逃げたほうがいい気がする。よくわからないけどこの場に留っちゃいけない気がする。」
「マジか?俺は大丈夫だと思うけどな。」
智也がそう言った途端、突如大きな音が聞こえた。それは何かを引きずっている音のようにも聞こえた。それを聞いた瞬間僕らは冷や汗と恐怖心に苛まれた。
「こ、この音やばい気がする。」
「ああ。逃げようぜ....。」
僕らはその場を離れようと振り返った。
その瞬間、僕らは見てはいけないものを見てしまった。
僕らの目の前には大きなライオンがいたがどこかおかしく、背中に天使のはねがついており、どこか禍々しい色を帯びていた。
「な、なんだよこれ……」
僕の声が震えた。智也も一瞬言葉を失った。
目の前に立つ異形のライオンは、まるで現実とは思えない存在だった。その背中に生えた天使の羽は、美しいはずなのに、どこか歪んだ不気味さが漂っていた。そして、禍々しい色彩がその体を包み込み、まるで世界そのものが狂っていることを象徴しているかのようだった。
「逃げろ、悠里!」
智也が叫び、僕らは全力で自転車を漕ぎ出した。
だが、その奇妙なライオンは動かず、ただじっと僕たちを見つめているだけだった。振り返ると、その赤い瞳が僕らの一挙手一投足を追っているのがわかった。背筋が凍る感覚が広がり、まるでどこまでも追いかけてくるのではないかという恐怖が僕を支配した。
「くそ……なんなんだよ、この世界!」
智也が焦燥感に駆られて声を荒げる。
僕らはただ無我夢中で逃げ続けた。だが、どこまで逃げても周囲は赤い空と荒廃した風景が続き、出口が見えない。この世界に迷い込んでから1時間以上が経過していたが、まるで永遠に同じ場所を走っているような感覚だった。
「この世界は……なんなんだ……」
僕は心の中でその問いを何度も繰り返したが、答えはどこにも見つからなかった。
革命 渋谷ヨル @aru_sann02
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