地雷系
刈葉えくす
弾けんばかりの愛を君にっ!
最近、受験勉強で疲れているからか、変な幻覚を見るようになった。
「あー、岩田君だー。やっほー」
女が、全く面識のない、地雷系のファッションを身に纏った女が、道路の上に大の字に寝ていて、しかも話しかけてくる。という幻覚である。
最初こいつを見た時は、市販薬で最近流行りの
しかし、二度目の邂逅の際、事態は一変した。なんと、全く別の場所に全く同じ格好で現れやがったのである。
「岩田君、すきー」
なんだこの女。俺は自分で言うのもアレだが、品行方正、清廉潔白を化身にしたような男だぞ。こんなフラチな恰好をした薬物中毒(多分)の女と接点なんか微塵もあるまい。そもそもなんで俺の苗字を知ってるんだ?
そして今が丁度、3回目の遭遇だった。
「お姉さんと遊ぼうよー。ねえねえ」
「アナタなんなんすか?こんなところに寝てたら捕まりますよ。というか俺が呼びますよ。警察」
平静を装って言ってみた。
「んもお、そんな細かい事はいいじゃん。それよりお姉さんと遊ぼ?ね?」
女は意味ありげに脚をくねらせ、そんなに大きいわけでもないが小さいわけでもない胸を強調するようなポーズを取った。その蠱惑的な表情に一瞬、俺は心を奪われそうになったが、アスファルトの地面が俺を現実に呼び戻した。
絶対に幻覚だ。かなり厄介な幻覚を見ている。いくら女に縁が無いからといって、一般的な高校生はこんなモノは見ないだろう。きっと疲れているんだ。当分は息抜きの時間も増やしてみるか。
俺は女を無視して歩き出した。
・・・
しまった!『息抜き』し過ぎた!
返却されたテストの答案を見て、俺は絶望に打ちひしがれた。前々からテストの成績が下降傾向にあった俺だが、今回のテストは致命的だった。
クソッ!最悪だ!死にたくなってきた!いや、やっぱり俺以外死ね!俺より点数高かった奴全員死ね!
絶望はやがてこの国の学歴社会への怒りに変わり、それはやがて、自業自得と分かっていても尚、責任を転換しようとする自分への自己嫌悪的な感情に変わり、帰路に就く頃にはその全てが渦となって俺を呑み込んだ。
はいはい、生きててすいません。存在しててごめんなさいねホントに。
そんな感じで自室に入ると──
「いやあ、やっと『ここ』に来れたよぉ……」
居た。例の地雷系の女が、今度は俺のベッドの上に寝転がっていた。女は両手を伸ばし、小声で言った。
「……えっちしようぜ」
ごくり。と唾を呑み込む。頭とアレに血が昇るのがわかった。もう、なんか、しちゃってもいいか。どうせ幻覚だし。
俺は女に乗しかかり、乱暴にその乳房を蹂躙した。絶対気持ち良くは無いであろう揉み方だったが、その度に女はわざとらしいくらい媚びた声で鳴いた。
足を強引に開き、下半身を舐める。どこをどうすれば女は喜ぶとか、そういう知識は全く持っていなかったので、ただ犬の如く、本能の赴くままに舐めた。
(なんつーか……『火薬』臭いな……コイツの)
女性の陰部は独特な臭いがするっていうのは知っていたが、ここまで独特だと困惑するものが有った。まあ、幻覚だし、こんなものだろう。
「ん、、そろそろ、君の……ちょうだい……!」
そして、いよいよその瞬間がやって来た。爆発しそうなくらいバキバキになったソレを露出させ、コイツの中に……
「んあっ!」
…………ガチャリ!
──その時、女の腹辺りから、人間からは絶対に出ないような音がした。明らかに、何らかのスイッチが作動したときの音だった。
「…………へ?」
女は、糸が切れた人形のように動かない。ガチガチガチガチ……という音だけが響き渡る。
あれ?抜けない……おい……おいおいおいおいおいおい!!
どうなってんだ!全然抜けねぇぞ!畜生!どうなってやがる!
「うわぁっ!」
突然『再起動』した女に、えげつなく強い力でぎゅっと抱きしめられる。女は、俺の耳元に顔を近づけて、囁いた。
「だいすき」
火薬の匂いが部屋中に広がる。きゅいーん、という耳鳴りの様な音がした。その瞬間、女の身体が金ぴかに輝き、視界が真っ白に染まる。
ああ、『地雷系』ってそういう……
全てが、閃光の中に消えた。
地雷系 刈葉えくす @morohei
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