光と闇の絆

@tyoko_reta

光と闇の絆


第一章 運命の出会い


今年で15歳になるダリア・ルサファー公爵令嬢は、貴族の子息たちが通う最高峰の学び舎「モンド学園」へと入学した。彼女は名門貴族の娘として、幼い頃から厳しい教育を受け、王子の婚約候補に名を連ねるほどの地位にいる。誇り高いダリアにとって、それは自然なことだった。


だが、彼女には密かに心を曇らせる不安があった。それは、「聖女」と呼ばれる存在だった。数か月前、教会から「光魔法で闇を祓う聖女が神の啓示を受けて地上に降り立った」との知らせが届き、国中が沸き立った。聖女に選ばれたのは、平民の少女フリーシア。銀の髪に黄金の瞳を持つ彼女は、その美しさと慈愛で瞬く間に人々の心を掴んでいった。


ダリアはフリーシアに対して複雑な感情を抱いていた。嫉妬や憧れ、そして「自分は彼女に劣っているのではないか」という不安。しかし、モンド学園での出会いを通じ、ダリアはフリーシアの優しさと芯の強さに触れ、次第に彼女に心を開き始めた。二人はやがて互いを支え合う友となり、それぞれの使命に向き合うことを誓い合う。


第二章 隠された秘密


ある日の夕暮れ、学園の中庭でダリアは突然、王子から呼び出される。心配そうな顔をして現れた王子は、深刻な表情で打ち明けた。


「ダリア、君にだけ相談したいことがある。実は…王宮には、誰にも知られていない秘密があるんだ」


王子は話を続けた。実は王宮には隠された「忌み子の姫」が存在するという。王子の妹であり、ダリアたちには知らされていなかったもう一人の王族、その名はアリア。彼女は「忌み子」として忌避され、幼少期から王宮の地下にある「禁忌の部屋」に閉じ込められているのだという。


「…誰もが彼女の存在をなかったことにしている。けれど、僕にはどうしても気がかりなんだ」


王子は複雑な思いを抱えながらも、妹アリアに何とかして助けの手を差し伸べたいと考えていた。しかし、禁忌の部屋に入るためには第一王子の直筆署名と王室の印が刻まれた特別な許可証が必要だった。第一王子は権力欲が強く、妹を「王家の恥」として存在すら認めようとしない冷酷な人物であり、彼の許可を得るのは非常に難しかった。王子は自身の立場を懸けてこの許可証を手に入れ、ダリアに託した。


ダリアはその夜、フリーシアに事の次第を話した。フリーシアも驚き、そして悲しそうに目を伏せたが、ダリアの強い決意を理解し、協力を申し出た。二人は手を取り合い、アリアを救うための行動を開始する。


第三章 囚われの姫


夜闇に紛れ、王宮の地下へと忍び込んだダリアとフリーシアは、許可証を使って重い扉を開いた。禁忌の部屋の最奥にたどり着いた二人は、薄暗い部屋の中にうずくまる一人の少女を見つけた。彼女の名はアリア。黒い髪に寂しげな瞳を持つその姿は、儚くも美しかったが、同時に深い孤独と恐怖を抱え込んでいるように見えた。


フリーシアが優しく声をかけると、アリアは怯えたように身を縮めたが、やがてかすかに頷いた。彼女は生まれた時から「忌み子」として扱われ、家族にすらその存在を否定され、幽閉され続けていた。


「私なんて、生まれてはいけなかったの…」


か細い声でそうつぶやくアリアの姿に、ダリアは胸が痛んだ。しかし、彼女をここから連れ出せば、重罪に問われる可能性があった。王子からも、「もしもアリアを外に出せば、君も罰せられる」と厳しく警告されていたのだ。


「フリーシア…どうしよう?」ダリアが不安げに問うと、フリーシアは静かに微笑み、アリアの手を取り優しく語りかけた。


「大丈夫、アリア。私には教会の加護があるから、誰も手出しはできないわ。あなたを守るために全力を尽くすわ」


その言葉にダリアも勇気を得て、アリアを連れ出すことを決意した。二人はアリアを抱きかかえるようにして禁忌の部屋を後にした。


第四章 教会の加護と暗黒の陰謀


三人は教会へと逃げ込んだ。フリーシアの加護のおかげで、王族であっても聖女に手出しすることはできなかった。しかし、アリアを逃がした知らせは第一王子にも届いていた。第一王子は激怒し、アリアを奪還するために強硬な手段を取ろうと画策し始めた。


教会でアリアと共に過ごす中、ダリアとフリーシアは彼女の「闇の力」に気づき始めた。実は、アリアが忌み子とされたのは、この闇の魔力を宿していたからだった。しかしフリーシアは、アリアの闇の力を自身の光魔法で安定させ、制御する方法を見つけ出す。そして、アリアの力が単なる「闇」ではなく、「防御の力」であることを見抜いた。


「この力は誰かを傷つけるものじゃない。人々を守るためにある力よ」


フリーシアが優しく語りかけると、アリアは初めて希望に満ちた表情を見せ、涙を浮かべた。


第五章 光と闇の絆


やがて、第一王子の陰謀は暴かれ、国中にその悪行が知れ渡った。王家はアリアの存在を公にし、彼女の力を国のために役立てることを決断する。王も、娘の存在を認め、その力が王国の未来を照らす希望になると信じるようになった。


ダリア、フリーシア、そしてアリアの三人は固い絆で結ばれ、国を守るために協力し合うようになった。彼女たちはそれぞれの力を活かし、国と人々のために尽くす日々を送った。


この三人の友情と勇気の物語は「光と闇の姫たちの伝説」として語り継がれ、王国の未来を支える大きな希望となっていくのだった。










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