幽霊

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幽霊

 私が小学生の頃、本当に体験した一度きりの話です。

 私の通う学校は、たくさんの教室がある大きな校舎とは別に、一学年のみが割り当てられる小さな校舎がありました。

 夏休みには、大きな校舎も小さな校舎も開放されて、自由に出入りすることができました。夏休みになって数人の友達と、その、二つの教室しかない小さな校舎の玄関口で、遊んでいた時のことです。

 遊びの最中、ふと目をやると、玄関から教室へ続いている廊下の曲がり角に、長い黒の髪をした人が、真っ白で綺麗な服の裾を翻して角の奥へ入って行くのが見えました。

 私は気になって思わずあとを追い、近くの教室の中に入る白い服の裾を見かけて、すぐに覗いた室内には、誰の姿もありません。周りにいる友達に訊きましたが、みんなそういう人は見ていないようでした。

 よく考えると、そのひとの『足』がなかったように思えて、ああ、私は幽霊を見たのだと気付きました。

 怖いというのは、見た瞬間も、気付いた瞬間も、まったく感じませんでした。

 以来、幽霊を見たことはありません。

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