私の実家 5 その後。

父の言葉に引っかかりを覚えながらも私は車に戻りました。


今日はいなかったって前はいたみたいじゃないか。

というか、明るいからお化けは出なかったんじゃないか。


などいろいろ考えていると


「もー帰るよー」


と呼ばれた気がして

私は車へ乗り込みました。


トンネルを抜けてから

どうやって帰るのか聞いたのが間違いでした。


父は、えっ?なんで聞くの?と言わんばかりのトーンで


「トンネル通るよ?」


と言ってきやがりました。


私達は、先ほど嫌と言うほどしていた体制になり

通過するのを今か今かと考えていました。


母が後部座席の私達に話しかけました。


「何もないから見て見たら?」


私は恐る恐る顔を上げ、自分の体から一番近い窓から少しだけ外をみました。

トンネルの中は来た時より少しだけ明るく見えました。

トンネルの中にはところどころ壁から植物が生えており、壁をつたって伸びていました。

天上から水が落ちているのを見て少しビビりましたが、父が


「山の水が染み出しているんだろうね。人間が作ったトンネルは何もしないと自然に帰るだろうな。」


と話していました。


私達は、無事。トンネルを抜けました。

トンネルを抜けたあとの事は覚えていません。


疲れて寝てしまったんだと思います。


後日。母に

何故あの場所に連れて行かれたのか聞く事がありました。


〇〇トンネルのある山は、

こんな逸話があるそうです。


この山に敬礼をして飛び立つ兵隊さんがたくさんいたんだそう。

そして、それを見送る人々も。

その魂や心が残っている山なんだそう。


父は、詳細に語ることはありませんでしたが、

平和教育の一環で連れて行ったのではないかとのことでした。


普通に誘っても私達は行かなかったでしょう。

父なりに考えて連れて行ってくれたのだと思います。


終わり。

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