2024/9/7

 ショッピングモールの屋上に庭園がある。

 その庭園から北へ向かうゆるやかな下り坂には、華美な葉を持つ樹木が延々と並んでいる。

 奥へ奥へと進むうちにその葉は道に侵食しており、

「戻ろうか」

「足元もちくちくしてきたし」

 私と母は引き返す。

 この道をそのまま行っていればどうなっていただろう。



 ショッピングモールの屋上に庭園がある。

 その庭園から地下へと降りる螺旋状の道には、中世のドレスをイメージして彫られた樹木のモニュメントが並んでいる。

 樹木そのものが持つ色を利用したそれらは華やかで毒々しい。

「戻ろうか」

「暗くなってきたし」

 私と母は引き返す。

 この道をそのまま行っていればどうなっていただろう。



 ショッピングモールの屋上に庭園がある。

 その庭園から北へ向かうゆるやかな下り坂には、枯れかけた樹木が延々と並んでいる。

 北には霊園があり、そちらへ向かっている。

「ここでは南国の鳥の声がするらしい」

「どうしてだろう」

 ふと木々に目を向けると、隙間から作業着の腕が伸びている。おじさんがオオハシのオブジェを取り付けていた。

「見て!」

 私は叫ぶ。叫ぶが、周りには誰もいない。



 霊園に頭を向けて私は眠っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

夢は 月這山中 @mooncreeper

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説