第21話
地元を離れ随分あとの事です。終活中の母から連絡がありました。
「高校の時に貰ったメダル、処分してもいいかん?」
聞くと確かに私が通い中退した高校の名前で、メダルには私の名前があり、私は在学中に何か絵画で賞を貰ったようです。
全く記憶にありませんでした。
先生と反りが合わず、高校は一年で中退しました。その後はアルバイトを点々としながら、ひたすらイラストを描いていました。当時まだ珍しかった3Dソフトを購入し3Dイラストも勉強していました。
でも何かに投稿しようとか、プロになるとか、そう言った考えはありませんでした。むしろ本気で挑んで駄目だった時に、私は私の全てを否定されると恐れたのです。
アルバイト先を点々とし、あるスーパーで働いていた時に、私がいる事を聞きつけ懐かしい同級生が訪ねて来ました。小学生の時に私が認めていた、少女漫画を描いていた子です。
その子は絵をずっと描いていなかったそうです。就職が迫り、一度忘れかけていた漫画家になりたい、という夢が再燃し、そして私に手伝って欲しいとの事でした。
私にとっても最後のチャンスかも知れない。私達は仕事の合間、週二回集まって本格的に漫画を描き始めました。
しかしそれはほんの短い間でした。
私はこれで最後の覚悟、と毎日絵を何枚も描きました。しかし彼女は、前回集まった時と何の進捗もありません。
この温度差で仲違いしてしまい、漫画を描く計画も流れました。
程なく、彼女はどこかの設計事務所に無事就職が決まり、私はその後もひとり絵を描き続けていました。彼女とはそれきりです。
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