第18話
六年生全員の読書感想画が北校舎と南校舎の間の渡り廊下に貼り出されました。
記憶の中では、やはり全員が梟を描いたと思います。そしてそれぞれが一番印象に残ったシーンを描きました。
森の中を我が物顔で飛び回る梟。体中を小鳥たちの嘴で突き刺される梟。血を流しどこかへ退散する梟。
昔この子には敵わないと思った似顔絵の上手だった子は、洞から大きなお尻を出して糞をする梟を描き友達とケラケラと笑っていました。
私は、なぜその絵を描こうと思ったのでしょうか。
画用紙を縦方向にして、硬く角を立て、草一本も生えない岩肌を描きました。岩肌には稲妻の様な幾つものひびが入っています。
岩肌にかかるように、現実では見たこともないような、大きな満月。満月の輪郭はひとつながりではなく、短い線が途切れ途切れ端を交差させながら繋がっています。満月の背後には、星もなく、雲もない真っ暗な空間を黒と青と紫でグラデーションに塗り込みました。
灰褐色の枯木が岩肌から突き出し、枝は奇妙な形に曲がっています。
そこに小さな梟が止まっていました。梟は怒るでもなく、悲しむでもなく、ただ枝に掴まって満月の様な丸い目でこちらを見ています。静かに、じっとして、ただただ、こちらを見ていました。
テーマになったお話には、岩肌も月も出てきません。その崖は、梟が小鳥たちの森に来る前に住んでいた場所でしょうか。それとも、森を追い出された梟が住んでいる場所でしょうか。
私の何が、この絵を描かせたのでしょうか。
絵の右上には小さな金色のラベルが貼りつけてあります。一等でした。
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