第16話

 私は新しい絵画教室の隅っこで、いつも持ってきた少女漫画誌を読んでいました。そして時々小学生グループや油絵絵コースの様子を伺います。


 大人数に気圧されてしまった。内容が低学年の子に合わせられて容易だった。すぐ隣、見える所でもっと本格的な絵画の制作が行われていた。後付けならば、幾らでも理由らしい物は出てきます。


 私はこれまでに、少し同年代の子より絵を描き過ぎた。そうなのかも知れません。


 小学生グループの創作活動は、カリキュラムに沿って行われていたと思います。

 内容は低学年の子供や創作活動に慣れていない子供でも達成可能、それでいて個性を出す事が出来る余白部分も確保され、またバランスよく難易度が設定されていました。完成すると、出来不出来に関わらず、先生は最大限に褒めてくれます。

 

 私が部屋の隅で漫画を読んでいても、また、なんとなくやる気が出ない、という子の為に部屋の隣の和室が開放されてエスケープゾーンになっていました。あくまで、子供の自主性に任せ、強制はされません。

 とてもよく出来たカリキュラム、しかし私には幼稚園の焼き回しに感じてしまいました。

 最初こそ活動に参加しました。いつもの通り、褒められるポイントを突いて手堅く行います。園児だった頃の私を知っている先生は、とても喜び褒めてくれました。

 しかしこの報酬では、私は満たされなくなっていました。


 数回参加のあと、私はいつも部屋の隅か和室で漫画を読んでいました。そして早く中学生になって油絵を描いてみたい、そう思いながら雑誌の影から油絵コース見つめていました。

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