第15話

 作家に戻る先生が、私達の為に紹介してくれた。そんな風に憶えているのですが記憶違いかも知れません。

 小学五年生の春から通い始めた新しい絵画教室に、以前一緒に通った友達はいませんでした。単純に母が見つけて来ただけなのかも知れません。


 新しい絵画教室は、小学の学区から外れた街中にあって、そこではふたりの先生が子供達に教えていました。


 ひとりは、いつもニコニコとしてふんわりした雰囲気の若い女性の先生でした。

 先生と母との会話で、先生が私が通った幼稚園の元幼稚園教諭だった事を知りました。先生は私の事を憶えていてくれたそうですが、私は先生を全然憶えていませんでした。この女性の先生が小学生グループをひとり、またはたまにお手伝いさんを交え教えていました。


 もうひとりは壮年の男性で、私が中学に上り油絵のコースに入るまでは、大人の男性ですし内向的な性格もあって、殆ど関わりを持つ事はありませんでした。妹が大学受験の為教わったのもこの先生です。


 新しく通い始めた私は、もちろん最初は小学生グループからです。小学生グループは低学年の子供から六年生まで同じ場所、同じ内容を行いました。

 季節の絵や工作を長机三つか四つの子供達が同時に行うので、それはそれは賑やかでしたが、先生は元幼稚園教諭と言う事もあって、場が混乱することもなく、またひとりひとりにも丁寧に接してくれます。

 子供達も先生も皆いつも笑顔で絵を描き、画用紙を切り、折り紙を折ってとても楽しそうでした。


 でも残念ながら、いえ、失礼ながら私はその輪に入る事が出来ませんでした。

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