第12話
小学校に上がってからの図工の授業、つまり絵を描く事で報酬を得る事に苦労したのは、ひとつの絵を完成させるまでの工程がとても複雑になった事が理由でした。
完璧に使いこなせていた訳ではありませんが、私は小学校低学年から、例えば遠近法やデッサンにおける人体のバランス、光や影の描写法を実践していました。いわゆる「下描きが上手」と言われるものです。図工の教科書にも載っていましたし、絵画教室の専門書にもこれらの技法はありました。
しかし、幼稚園では使わなかった水彩絵の具やポスターカラーに苦戦していました。そもそも色彩感覚がなかったのかもしれません。丁寧に下描きを施しても絵の具を塗ると鉛筆線は潰れ、混ぜすぎた絵の具は彩度を落としました。
これを教えてくれたのもこの絵画教室でした。パレットにはあまりたくさん絵の具を出さない、混ぜる場合は一度にせず少しずつ、黒は極力使わない。透明水彩と不透明水彩の違いなど。
教われば難しい事ではありませんでした。もちろん、くどいようですが絵画の才能があった訳ではありません。絵の具を塗る事でマイナスになっていた部分が矯正されてプラスに転じた、つまり図工の授業での評価が上がったという事です。これにより不足していた報酬、褒められる事がまた増え、同じタイミングで通学団でのいじめも止み、ある意味、絵を描いていた時代では一番充実した期間だったかもしれません。
こうやって、絵を描いて暮らせれば。
将来の夢、そんな作文などにはその頃からはっきりと「画家」または「芸術家」と書くようになりました。
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