第10話
小学三年生くらいになると周りの事が見えて来るようになります。個人差はあると思いますが、私はそのくらいでした。
それまでは、絵を描くと言うことは私と、私が絵を見せる人との一対一のいわば勝負のようなものでした。それが三年生くらいになりクラス替えや人の噂で、私のように絵を得意とする子がいる事を知りました。
何人かの同級生の中でとりわけ二人、私よりも上手いと思える子がいました。私はその子らも幼稚園で表彰されたのだろうか、と思いました。
ひとりはとても似顔絵が上手でした。友達の顔や体格の特徴を掴みそれをデフォルメしたり誇張したりする事が得意でした。やや揶揄するようなところもありましたが、描いてもらった子はとても嬉しそうにしていました。描いてもらったと言う特別感と、揶揄られ怒るギリギリのバランスを瞬時に掴み取れるすごい能力だと感じました。
もうひとりは漫画が得意でした。女の子であれば得意不得意に関わらず低学年でしたら一度は、あの瞳の中にキラキラ星が輝き髪を巻いた少女漫画のキャラクターを描くと思います。その中でも群を抜いてその子は上手でした。そして直接見たことはありませんが、ノートにオリジナルの少女漫画を描いて友達の間で回していたようです。
この二人に共通したのが、これ程の絵を描く力と特徴的な作風を持ちながら、図工の授業や校内の絵画コンクールにそれ程力を入れていなかった事です。もし二人が本気を出していたら、はるかに私より評価された事でしょう。
この事が、私が絵画の方面に力を入れ始めたきっかけとなりました。
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