第9話

 とは言え、幼稚園ではまだまだなだらかだった個人差は、小学校に上がるともっとはっきりします。あの子どんな子、勉強のできる子、運動のできる子、ピアノが弾ける子、優しい子、面白い子、そして絵が描ける子。などなど。

 私は絵の描ける子に入る事ができ、なんとか報酬を得る事が出来ていましたが、他の事については壊滅的とまでは言わなくとも平均下を回っていました。

 

 通知表は当時五段階、図工となぜか音楽が5、後は2か良くて3。一番苦労したのは2年生になってからの九九で、九九の歌のカセットテープを繰り返し聞いてなんとか覚えました。逆上がりもクラスで一番遅かったと思います。


 幼稚園よりも上級生との年齢差があった小学校では、通学団での私に対するいじめも短期間ですが戻って来ました。

 集団登下校の最中に、私は別の同級生とふたり、電気コードでの「鞭打ちの刑」をよく受けました。腿の裏などやらかい所を電気コードで打たれると、アシナガバチか何かに刺されたようなバチン、という痛みが走ります。また腫れた跡が見苦しく、スカートを履けなかった事が一番悲しかった記憶があります。せめて、と思った刺繍入りのGパンもゴワゴワした裏地が当たると痛むので、結局カッコ悪いジャージばかりを履いていました。


 そんな事もあってか、私は前よりもまして絵を描きました。褒めてもらえる事で、なんとか自分を保てた事は幸運だったと思います。


 しかし、やはり小学校に上がると水彩画や風景画、交通安全ポスターなど、求められる絵の水準が上り、徐々に力不足感じるようになりました。

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