第6話
同年代の子供より多少絵が上手だった、それだけです。絵の才能があった訳ではありません。他の子より早く始め、他の子が別の事をしている間も絵を描き、それを人に見せ、反応を見て修正し。本当にただそれだけなのです。
しかし、私には褒められる絵を描く才能がありました。
最初は絵本や、幼児向け雑誌などからの模写を中心に練習していましたが、ある時から父や母が、それぞれ好む絵が分かるようになりました。
自動車メーカーに勤める父は、やはり車の絵を描くととても褒めてくれます。動物好きだった母は、猫や鳥を描くと喜びました。それが多少稚拙な絵でも、見る人が好む絵を描くと大概褒められます。
動植物、家族、笑顔などが平均的に褒められる事が分かり、そう言った絵をたくさん描きました。しかし同じ絵ばかりだと、だんだん反応がおざなりになってくるようです。
他の子が一筆描きでチューリップを描く時、私はヒマワリを描きました。大きな円を描き、その周りに花弁をたくさん描きます。円の中に交差する線を入れると、びっしり詰まったヒマワリの種が描けました。
これは保育園の先生に褒められました。他の子よりも絵を構成するパーツが多かったからです。
それらを図鑑や雑誌から学びました。反応が薄れて来たら、そのヒマワリの絵に子供を付け足します。麦わら帽子の網目はヒマワリの種と同じ描き方で表現できました。そうやって褒められる表現方法や技法をチラシの裏で来る日も来る日も練習したのです。
信じられないかも知れませんが、本当にそうやって幼い私は絵を描いていたのです。
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