第4話
今思えば、そして冷静に考えれば私の通っていた幼稚園の方針だったのだと思います。またはもっと上、当時だと文部省とかからの指針だったのかも知れません。
いずれにしても、たぶん私たち園児が入園から卒園までの間に、平等に、漏れなく、何かしらで表彰されるシステムだったのだと思います。もちろん確かめようもないのですが。
月曜日の朝礼で、幾人かの園児が名前を呼ばれます。みんなと朝礼台の間にちょっとでこぼこな横一列に並びます。先生たちが手描きで作った表彰状が手渡され、折り紙セットに一枚しか入っていない金の折り紙が貼られたメダルが首にかけられます。
一番かけっこ速いで賞、給食残さず食べたで賞、うさぎのお世話を頑張ったで賞、一番優しいで賞などなど。でもこれは私の想像で、他にどんな賞があったかなんて知りません。ほんとに他の子も表彰されたのかも、幼稚園児のあやふやな記憶では藪の中です。
私の記憶の中では、私だけが表彰された事になっています。他の子だってそう憶えているか、憶えていないと思うのですがどうでしょう。
ともかくみんなの前に立たされる緊張感と、いつものお遊戯にはない非日常感と、金色に輝くメダルが首にかけられた高揚感が私の記憶に鮮烈に刻まれました。
この表彰式は幼いながらも既に劣等感の塊だった私に差した光であり、その後数十年残る呪いみたいなものでした。
いじめられていても、頭が悪くても、足が遅くても、字が書けなくても、うさぎが怖くても、なぞなぞの答えが分かっていても手が挙げられなくても、私は一番絵が上手なのです。
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