第3話
私の通っていた幼稚園では、毎週月曜日の朝に園児が園庭に集められます。今思いだすと随分と低い朝礼台に先生が上がり、何か体操をしたと思います。
どんな体操だったのかは全然思い出せませんが、朝礼台でジャンプしながら頭の上でタンバリンを鳴らすとても背の高い男の先生が、ある日素手で、そのタンバリンを破った事だけは覚えています。
私はこの体操が好きではありませんでした。いえ、幼稚園そのものが好きではなかったんです。
私は内気で気が弱く、よくお友達にいじめられていました。一度は振られた拳が目に当たり、お岩さんのように腫れてしまいました。この時ばかりは母が相手方に言ってくれたようですが、それ以外では先生の胸で泣くばかりでした。
読み書きが苦手で、あまり絵本も読まず、字も算数も覚えるのが他の子よりも遅かったように思います。
小児喘息を持っていて体が弱く、走れば胸が苦しくなり、プールでは顔がつけられず、運動するのがとても辛く感じていました。
早生まれで体が小さく、言葉は遅く、怖がりでウサギにも触れません。送迎バスの中で、運転手さんが出すなぞなぞの答えが分かっても、下を向いてもじもじしているだけでした。
そんな感じで散々だった私はとにかく幼稚園に行くことが億劫で、よくグズって母に怒られたものです。
そんな私でしたが一度だけ、朝礼の体操の後みんなの前で表彰されました。上手く体操が出来ず、その朝もげんなりしていた私の名前が突然呼ばれ、とてもびっくりした事を覚えています。
その時、私がもらったのは「一番絵が上手で賞」でした。
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