第40話 えいゆうとゆうしゃ
それで? きかせてもらえるかな、あなたがなにものか。ちなみにわたしは『えいゆう』なんてよばれてるけど、とくべつたいしたものじゃないわ。
『えいゆう』とよばれるおんなのひとは、やさしいめをしながらも うむをいわせない はくりょくをともなって ゆうしゃにしつもんしています。
わ、わたしは、『ゆうしゃ』です。わたしもあなたとおなじで とくべつな にんげんではありません。
ゆうしゃは すこしだけこえをふるわせながらも、けして『えいゆう』から めをはなすことなく こたえます。
あら、あなたが『ゆうしゃ』なんだ。すこしだけ うわさにきかせてもらったわ。たくさんのまぞくをたおして、たくさんのひとたちをすくったって。
ゆうしゃのこたえにまんぞくしたのか、『えいゆう』は にっこりとわらいかけます。
どうじに、まわりにあつまっていたひとたちが おおいにもりあがりました。
おおっ、『えいゆう』と『ゆうしゃ』がそろうとは、きょうは なんていいひだ!
これでわたしたちは すくわれる。これでようやく まぞくのれんちゅうが わたしたちのせかいからいなくなるぞ!
ひとびとは よろこびさけびながら、おどりだすひとまであらわれるしまつです。
…………。
まおうは すこし、いえ かなりふくざつな きもちになりました。
あちゃ~、こんなとこで あなたのしょうたいをきいたのは まずかったかなぁ。みんな すきかってもりあがりはじめちゃった。
『えいゆう』は しっぱいしっぱいと はんせいをくちにしながら、こんどは まおうにしせんをむけます。
それで、きみのほうは なにものなのかな? きみも わたしをちゃんとにんげんとしてみてる、ってより わたしをみても なんともおもってない、ちがう?
ん? まあ、な。
まおうは『えいゆう』の いあつかんをきにとめることなく かるくへんじをします。しょうじき、まおうにとって『かのじょ』は どうでもいいそんざいだったからです。
はぁ、やっぱり。きみみたいな いいおとこにあいてにされないってのも さみしいもんだけど、わたし きみのことどこかでみたおぼえがあるんだよね。
『えいゆう』は さらにいっぽふみこんで したからまおうのかおを のぞきあげます。
なんだ、あまりジロジロみてくるな。
まおうは あからさまにいやな かおをしました。
あら、ごめんなさい。こいびとのめのまえで することじゃなかったわね。
『えいゆう』のおんなのひとは、かるくしたをだして ゆうしゃにむけてあやまりました。
なんで そいつにあやまるんだよ。おれにあやまれ、おれに。
そ、そうですよ。わたしたち、こいびとなんて かんけいじゃないんですからっ。
ゆうしゃとまおうの はんのうをみながら、『かのじょ』は おもしろおかしくわらっています。
そうなんだ、てっきり『ゆうしゃ』に つきしたがう『きし』さまかとおもったわ。だけどそれなら、ふたりは いったいどんなかんけいなのかしら?
『かのじょ』は わらいながら ふたりにといかけます。
そ、それはですね。
え~と、だな。
ですが ゆうしゃとまおう、ふたりとも ことばにつまってしまいます。
あ、やっぱりいいわ。きいたら あともどりできなさそうだし。それよりも ふたりとも わたしといっぱいつきあわない? まぞくのおおものをたいじして これからたっぷりおれいをもらうとこだし、わたしが ぜんぶおごるわよ。
『えいゆう』は ふたりのかたをだいて ごういんにさかばへと いこうとします。
え、あの。わたしたち、これからですねっ。
ゆうしゃは とつぜんのさそいにとまどっています。
……いや、せっかくだし こいつに おごってもらおう。『してんのう』をたおしたってはなしも きかせてもらえるかもしれん。
まおうは いがいなことに『えいゆう』のさそいをうけることにしました。
え、そうなんですか!?
ゆうしゃは まおうのいがいな はんのうにおどろきます。
そっかぁ、ゆうしゃちゃんは きてくれないのか。でもいいわ、かれだけでも きてくれるなら おねえさんいろいろふんぱつしちゃうっ。
『かのじょ』は まおうになかば だきつくようなかたちで かれをさかばへつれていこうとします。
そのようすをみて、ゆうしゃのむねのうちから なにかこみあげてくるものがありました。
ちょっと、まってください。わたしも いきますから!
ゆうしゃは あわてて『えいゆう』とまおうを おいかけます。
─────あせるような しんぞうのこどうをおさえながら。
そのきもちのしょうたいが なんなのか、どこからくるものなのか、そのこたえを かのじょがしるのは もうすこしさきのはなしです。
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