第31話 つきのしたのさいかい

ゆうしゃとまおうのふたりは まじんのおじさんから もらったじょうほうにしたがって にしのいわやまにむかっていました。


にしても さっきは おどろいたな。あのおとこからもらった くびかざりに あんなに たかいねだんがつくなんておもわなかったぞ。


まおうが さきほど たちよったまちでおこったできごとを ふりかえっていいます。


ゆうしゃとまおうが ふたりでまちのとおりをあるいていたところ ゆうしゃのくびかざりをみて おどろくようなねだんでうってほしいとおねがいしてくる ひとがいたのです。


だけどよかったのか、それをうらなくて? あれだけの かねがあれば たびもずいぶんとらくができるだろ。


まおうは となりをあるくゆうしゃを ふしぎそうにみています。


これを うったりなんかしませんよ。せっかくもらったモノなんですから、たいせつにします。


ゆうしゃは ほんとうにたいせつそうに じぶんのくびかざりをさわります。


そう、かよ。まあ、おまえがそれでいいなら おれもそれでいいが。


ゆうしゃが あんまりにもしあわせそうにわらっていたので、まおうは どうしてかきはずかしくなって かおをそらしました。


ところで、どんなやつなんだ? さがしてる おまえのなかまってヤツは。


おもわず まおうは わだいをかえます。


このまえの『まほうつかい』みたいに あたまのおかしいヤツじゃないだろうな。


『かれ』ですか? そんなことないですよ。まじめで すなおな いいこです。


ゆうしゃは こたえました。


『かれ』ってことは おとこなのか? まおうは ききます。


おと、こ? あれ、そういえば きちんと せいべつをかくにんしていないですね。


ゆうしゃは あれれ とかんがえこんでいます。


そんなことあんのかよ。なかまだったなら おとこかおんなかくらいわかるもんだろ。


まおうは あきれてしまいました。


いえ、たぶん おとこのこなんですよ? だけど、はっきりは いいきれないというか。


ゆうしゃの ことばは どうにも はぎれがわるいです。


まあいいさ、おとこかどうかなんて。まじめなヤツなら、まともに かいわくらいできるだろうしな。


まおうは そういって ゆうしゃのまえをあるいていき、それにゆうしゃがついていきます。


ふたりが しばらくあるいて よるになるころ、にしのいわやまにたどりつきました。


いいえ、ざんねんなことに そこにいわやまは ありませんでした。


おい、なんだよこれ。 まおうが こえをふるわせます。


いわやまが ぜんぶ、いますね。 ゆうしゃも おどろいています。


あたりいったいには かつて いわやまだったはずのモノが こなみじんになってちらばっていたのです。


あいつが、やったのか? まおうの しせんのさきには ひとりの ひとかげがあります。


つきのひかりに てらされて、しろい きもののしょうねんが ただずんでいました。


そのりょうてには それぞれの『かたな』をたずさえて。


─────だれで、ござるか?


しょうねんは ゆうしゃとまおうに きづきました。


ひさしぶり、だね。 ゆうしゃは しずしずと まえにでます。


ゆうしゃであったか。……ひさしぶりでござる。


しょうねんは ゆっくりと からだをふたりにむけました。


それで、そちらのごじんは どなたでござるか? しょうねんは ゆうしゃにききます。


このひとは、まおうだよ。 ゆうしゃは こたえました。


そうで、ござるか。─────また、ころさねば ならないのだな。


しょうねんは なみだのような しずくをこぼし、どうじに りょうての『かたな』が しずくをきりさきながら まおうへとせまっていました。



ざんねんなことですが、まおうは『かれ』と まともな かいわをすることができなさそうです。


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