きかいにんぎょうのなれのはて
第29話 かたなかじのものがたり
むかしむかし、ひとりの『かたなかじ』が いました。
『かたなかじ』は『かたな』をつくることに じんせいをかける しょくにんです。
『かたな』は、まぞくとたたかうために にんげんがつくることのできた ゆいいつのぶきでした。
だから、『かたな』は つくられるたびに せんじょうへと はこばれていきます。
はこばれたさきの せんじょうで、たいしてやくにたつこともなく おれていきます。
だって、まぞくは とてもつよくて にんげんのつくったぶきなんかじゃ かんたんには きずつきません。
だから、『かたな』なんかよりも『せいけん』が だいじにあつかわれていました。
しろいみずうみから うまれる『せいけん』こそが まぞくにも おそれられるぶきなのです。
『かたなかじ』は それがくやしくて たまりません。
『たましい』をこめた『かたな』が いみもなくこわれていくのが ゆるせません。
『かたなかじ』は『せいけん』をこえることをめざして なんどもなんども てつをうちます。
その『かたなかじ』は『まじん』でもあったので、ふつうのにんげんよりも ながいじゅみょうをもっていました。
なので、そのながいじんせいをかけて『かたな』をつくりつづけます。
いつしか『かたなかじ』は『せいけん』にまけないくらいの『かたな』をつくれるようになりました。
だけど、せっかくの『かたな』をじょうずにあつかえるひとがいません。
『さいのう』のあるひとたちは みんな『せいけん』をつかっているので、『かたなかじ』の『かたな』をつかってくれません。
『たましい』がやどっているといえるほどの『かたな』なのに、だれにもみむきもされないのは さみしいことです。
だから、『かたなかじ』は かんがえました。
じょうずにつかってくれるひとがいないなら、『さいのう』あるひとたちがつかってくれないなら、『りそうのつかいて』をつくってしまえばいいと。
『かたなかじ』は りそうのきかいにんぎょうをつくることにします。
もんだいは ありません。かれは『まじん』なので、ながいじんせいがあります。
そのすべてを、ひとつのきかいにんぎょうにそそぎこむことにしたのです。
ともだちは いりません。
たったひとつ、きかいにんぎょうに『たましい』をこめます。
こいびとは いりません。
たったひとつ、きかいにんぎょうに『たましい』をそそぎます。
かぞくは いりません。
たったひとり、きかいにんぎょうに『たましい』をのぞみます。
しあわせは いりません。
たったひとり、きかいにんぎょうに『たましい』をゆめみたから。
きのとおくなるようなじかんをかけて、きかいにんぎょうは かんせいしました。
もじどおり『たましい』をこめたのです、りそうどおり『かたな』をだれよりもじょうずに あつかってくれることでしょう。
ただひとつ、おもいえがいたりそうと ちがったことがあるとするならば、その『にんぎょう』には ほんとうに『たましい』がやどっていたことでしょうか。
その『にんぎょう』は ことばをりかいし はなしました。
『かたなかじのまじん』の やくにたちたくて、いろいろおせわをしてきます。
『かたなかじのまじん』の りそうをかなえたくて、『かたな』をふりたがります。
『かたなかじのまじん』は てんをみあげて ただいちど こうかいをします。
どうして 『たましい』がやどってしまったのか、と。
かれは すべての『かたな』に『たましい』をこめたつもりでした。
すべての『かたな』が じぶんの『こども』のつもりでした。
なのに、だからこそ、めのまえの『にんぎょう』はどんな『かたな』よりも かれにとって『こども』のようにみえたのです。
ともだちも こいびとも かぞくも しあわせも いらないとおもっていました。
みんなのあたりまえにつきあっていては じゅんすいに『りそう』をおいもとめられないとおもっていたからです。
だけど、めのまえの かいがいしくふるまう『にんぎょう』をみて かれはまよいます。
ほんとうに、このこに『かたな』をつかわせるのか?
ほんとうに、このこに『かたな』でだれかをきらせるのか?
まるで ほんとうの『おや』のようです。
ですが、かれのきもちもしらず『にんぎょう』のしょうねんは『かたな』をつかうことにこだわります。
だって『にんぎょう』のしょうねんは、そのためにうまれてきたのですから。
だれよりもじょうずに『かたな』をあつかう、その『りそう』をかなえるために『たましい』をやどしたのですから。
あるひ『にんぎょう』のしょうねんは『かたな』をにほん てにして いえをとびだします。
ずっといえのなかにいては『りそう』がかなえられません。
『かたなかじのまじん』の『りそう』をしょうめいするため 『にんぎょう』のしょうねんは せんじょうへととびだしていきます。
いえのなかには だれもいません。
みんなのあたりまえをきりすてて たったひとつ のぞんだ『りそう』すら そこにはありません。
だからこそ、だれもいなくなったいえのなかで『かたなかじのまじん』は きづかされます。
『りそう』のしょうめいなんて どうでもいい。
『かたな』をじょうずにあつかえなくたって かまわない。
ただ じぶんは『にんぎょう』のしょうねんに、あたりまえのこどものように わらってほしかっただけなのだと。
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