第28話 そんをするいきかた

ゆうしゃとまおう、そして『まじん』のおじさんは『かたなかじのまち』の おじさんのおみせへと いっしょにかえってきました。


『まじん』のしょうねんは、さんにんといっしょにくることなく ひとりでどこかにたびにでてしまいました。


あのガキは つれてこなかったが、いちおう おれたちへの『いらい』は たっせいしたってことで もんだいないのか?


まおうが『まじん』のおじさんにききます。


ああ、もんくなしだ。ここからさき、せいこうも しっぱいもぜんぶ あのこぞうのもんだ。すくなくとも、わしがこれいじょう とやかくいうきはねえ。


そりゃけっこうだ。そういえば ゆうしゃ、『まじん』のガキとわかれるときに なにか いわれてなかったか?


まおうは、ふと『まじん』のしょうねんとの わかれぎわのことをおもいだします。


はい、『オレといっしょにふたりでたびをしないか』と いわれました。『オレがおまえをしあわせにしてやる』、とも。


ゆうしゃは なんでもないことのように いいます。


は? それっておまえ……。


まおうには、そのことばが『まじん』のしょうねんにとって いっせいいちだいの『こくはく』であったとわかりました。


でも、わたしのしあわせが なんなのかは じぶんでさがしているさいちゅうですし、まおうであるあなたとも はなれられないかんけいになっているので、といって おことわりしました。


ゆうしゃは また、なんでもないことのように いいました。


おまえ、ごかいされるような いいかたしやがって。


まおうは おもわず『まじん』のしょうねんに どうじょうしてしまいました。


それ、あのガキおちこんでいたろ?


はい、とってもおちこんでいました。どうしてわかったんですか?


ゆうしゃは じゅんすいなひとみでまおうにききます。


さすがに それをせつめいするきには なれねえよ。ああ、だからアイツ おれをにらみつけて なみだめで はしっていったのか。


まおうは いまさらながら『まじん』のしょうねんの なぞのこうどうをりかいします。


こんどあったときは まおうをたおせるくらいのおとこになってやるって いきごんでましたよ。


かおをあわせたら またケンカをうってくるとか、けっきょく ふりだしにもどってんじゃねえか。


めんどくさいことになったと まおうは あたまをかかえます。


ふ、めいわくをこうむるのが おまえさんひとりなら もんだいあるまい。


『まじん』のおじさんは おもしろそうに わらっています。


てめえ、ひとごとだと おもいやがって。こっちは これからおまえに なんでもようきゅうできるってこと わすれてんじゃねえだろうな?


まおうは みけんにしわをよせながら おじさんにつめよります。


ああ、もちろんわすれては おらんさ。だが そもそも、おまえたちは このまちになにか ようがあってきたのではなかったのか?


つめよってくる まおうにものおじすることなく、『まじん』のおじさんは いいました。


はい、そうなのですっ。わたしたちは かつての『なかま』をさがしに この『かたなかじのまち』にきたのでした。


はっとしたようすで、ゆうしゃが げんきよくいいます。


そうか、やはりな。おまえさんのいう『なかま』とは、『かたな』をにほんあつかう けんしのことか?


おじさんは、すこし ものがなしいようすで ききます。


そうです、しっているんですか?


……さて、ほんとうにしっていると わしにいえるものなのかどうか。


『まじん』のおじさんは なやましそうに おみせのなかの しょうひんだなをいじります。


おい、こたえるなら はっきりしろ。おまえは しってるのか? しらないのか?


まおうは イライラしたようすで またおじさんに つめよりました。


しゅんかん、おじさんがてにした『かたな』のきっさきが まおうの のどもとにつきつけられていました。


っ!? ……なんのつもりだ。


まおうは、おじさんの とつぜんのこうどうに びっくりしています。


もし、この『かたな』を おまえさんの のどにつきたてたとして、その『つみ』はだれが せおうべきだ?


おじさんは まおうへ しずかにといかけます。


もちろん おまえにきまってるだろ!


まおうは とてもおこっています。ですが おじさんは まおうのことばをきいて まんぞくしたようにうなずき、すんなりと『かたな』をひきさげて たなにもどしました。


それが わかっているならいい。『つくられたもの』が せおうべき『つみ』などないのだからな。


?? なんだったんだ?


まおうは じぶんの のどもとをさわりながら、ぽかんとしています。


おまえさんたちの しりたいことを おしえよう。このまちから ずっとにしへ すすんださきに いわやまがある。そこに おまえたちのさがす けんしがいるはずだ。


ほんとうですか!?


ゆうしゃが うれしそうになったのをみて 『まじん』のおじさんは ふくざつそうな かおをしました。


おそらくは、いまも アイツは あのばしょでこたえを さがしつづけてるのだろうさ。おまえたちへの『いらい』にたいする ほうしゅう、これで たりなければ、ほかにいくらでも さしだすが?


いいえ じゅうぶんです。わたしたちは さっそく にしにむかいたいとおもいます。


ゆうしゃは げんきよくこたえます。


ちっ、よくのないやつだ。もらえるものは もらっておけばいいだろうが。これじゃほとんど タダばたらきと かわらねえよ。


まおうは すこしだけふまんそうにしています。


たしかに、あれだけのことをしてもらって ほうしゅうが じょうほうだけというのも もうしわけないはなしだな。ほれ、こんなものでいいのなら もっていけ。


『まじん』のおじさんは しょうひんだなのおくから くびかざりをとりだして まおうにわたします。


なんだコレは? ふしぎそうにくびかざりをながめながら まおうがききます。


てなぐさみで つくったものだ。てきとうな『まち』でうれば『ろぎん』のたし くらいにはなるだろう。


ま、くれるってんなら もらっておくけどよ、おれがもってても にあわないな。ほら、おまえが かけておけ。


まおうは ゆうしゃのくびに くびかざりをかけました。


え、いいんですか? あなたがもらったのに。 ゆうしゃは おどろいています。


がんばったのは おまえもいっしょだろ。『ごほうび』をもらったからって いちいちおどろくなよ。


ですが、こんなふうに なにかをもらえたことって、なかったので。


ゆうしゃは じぶんにかけられた くびかざりを うれしそうにさわっています。


……おまえって、めをはなすと『そんをするいきかた』ばかりしてそうだよな。


まおうは ちょっとしたことで うれしそうにする ゆうしゃをみて、あきれたように ためいきをつきます。


だけど、ゆうしゃは そんなまおうをみて わらいました。


なんだよ、なにがおかしい? まおうは ふきげんそうに ゆうしゃにききます。


だって、あなたといっしょにいるあいだは『そんをするいきかた』をしないってことじゃないですか。それって、なんだかおもしろいなっておもったんです。


くびかざりを ゆらしながら、ゆうしゃが たのしそうにわらいます。


ふ、ふざけるな。だれが いちいちおまえのめんどうをみるかよ。


まおうは すこしだけ どうようしてこたえます。


でも、ゆうしゃの こんなえがおがみれるなら、もういちどくらい かのじょのために なにかしてもいいかな、なんておもってもいたのです。

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