第23話 まじんのいらい
まったく、ここが『かたなかじのまち』とはいえ、おまえも『かたな』をつくってんのかよ。
まおうは、おみせのなかにならべられた たくさんの『かたな』をみてためいきをつきます。
『かたなかじのまち』のひろばでのさわぎは はいいろのかみをしたしょうねんが どこかへ にげたことで いったんはおさまりました。
ゆうしゃとまおうは、かれらにこえをかけたおじさんのおみせで はなしをきくことになったのです。
きかせてもらっていいですか? どうしてわたしを とめたのかを。
ゆうしゃは あらためて、おじさんにききました。
りゆうは さっきもいったはずだ。あんたが いけば あのこぞうがしんじまう。だからとめただけだ。
ひくく、のぶといこえで おじさんはいいます。
そんな、わたしは そこまでらんぼうものじゃありませんよ。
ゆうしゃは しんがいだと こうぎします。
あんたにそのきがなくとも こぞうは しんでいただろうってだけのはなしだ。あんたにわるぎがないのはわかってる。わるぎは、ないんだろうさ。
そういって おじさんは ふかくためいきをつきました。
なんか、いろいろとわかってるふうだが、あのガキはいったいなんなんだ? まぞくってわけじゃ ないみたいだったな。
まおうは、しょうねんの しょうたいについてしつもんしました。
ほう、あのこぞうが まぞくでないと ひとめみてわかったのか?
おじさんは おどろきます。
おれは まおうだからな。それで、おれのしつもんにもこたえろ。
なんでまおうがゆうしゃと……まあいい。あのこぞうは にんげんとまぞくのあいだにうまれたこども、『まじん』だ。
そう、なんですか? ゆうしゃがおどろきます。
にんげんとまぞくのこども、か。おれもはじめてきくが そんなことありえるんだな。
まおうも すこしだけおどろいたようすです。
べつのしゅぞくどうしが ちかづけば、そんなことも おこりうるさ。ま、ちゅうとはんぱな からだをもつだけで たいしていいことはねえよ。まぞくとしてのちからもよわい。だから わしはあんたをとめたんだ、ゆうしゃ。
おじさんは ゆうしゃがもっている せいけんをみていいます。
あんたがもっている そのつるぎじゃ かすっただけでこぞうは しぬだろう。わかものが みすみすしんでいくのを わしは みすごせなかった。
かなしいめをして おじさんは いいました。
おまえが ゆうしゃをとめたりゆうは わかった。だがあのガキはあれだけ おおあばれしてるんだ。いずれにんげんどもに とらえられるか、ころされるぞ?
まおうは れいせいな いけんをいいます。
ああ、もちろんわかっている。だから あんたらにたのみがある。あのこぞうを、すくってやっては くれないか?
ふとく、しずかなこえで おじさんは いいました。
はぁ!? おれたちが あのガキをすくう? なんでそんなことしないといけないんだよ。
おじさんのことばに、まおうは おこりだします。
むろん、おぬしたちにそんなぎりがないことはわかっている。だが、じゅうぶんなちからならあるだろう?
ゆうしゃとまおうをみて、おじさんは ことばをつづけます。
ちゅうとはんぱなつよさでは、あのこぞうをしょうもうさせ、いずれしなせるだけだ。おまえたちの あっとうてきなちからで、あやつを おとなしくさせてやってほしい。それができたなら、わしがなんでもおれいをしよう。
おじさんは、ふかく あたまをさげました。
どうして、あなたがそこまでされるんですか? ゆうしゃがききます。
さて、なぜだろうな。……おそらく、ひとごとには おもえんかったからだろう。だれしも わかいうちは みちをふみはずす。さいしょのいっぽが とてつもなく めぐまれぬこともある。だが、ただそれだけで これからのみちゆきがとざされてしまうのは、ふびんにおもえてな。
おじさんのことばを、まおうもしずかにきいていました。
ったく、そのあとしまつを おれらにおしつけられちゃ たまらねえが、おまえのいいぶんは たしかにただしい。なにかまちがえたときに、もういっぽあしをふみだすチャンスくらいは、だれにだってほしいもんだよな。
そういってまおうは おみせをでていきました。
おいっ、へんじは? おじさんが あわてます。
ですが、ゆうしゃは まおうのうしろすがたをみて、かわりにこたえました。
たぶん、おれたちに まかせろってことだとおもいます。わたしも、おなじきもちなので。
こうして ゆうしゃとまおうのふたりは、まじんをすくういらいを うけつけました。
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