第22話 かたなかじのまち
『どれいのくに』をでた ゆうしゃとまおうは、『かたなかじのまち』にたどりつきました。
まちは おおぜいのひとで にぎわっています。
まったく、『どれい』だらけのくにのつぎは よりによって『かたな』のまちかよ。なんだゆうしゃ、これは おれにたいする いやがらせか?
まおうは げんなりしたかおで ゆうしゃにもんくをいいます。
いやがらせなんて とんでもないです。ただわたしが ここにきたかっただけですよ。ほら、このまえ まほうつかいの あのひとにあったじゃないですか。
ゆうしゃは げんきのない まおうとは はんたいに、あかるいかおで こたえます。
まほうつかい? あのハチャメチャなやつのことか。ああ、それがどうしたって?
まおうは『どれいのくに』で であった まほうつかいのことをおもいだします。
わたし、すごくうれしかったんです。なので、ほかのひとは いまどうしているんだろうっておもったんです。
ゆうしゃは そらをみあげながらいいます。
ほかのひと? まおうは ききかえしました。
あなたと あうまえは、ほかにも なかまがいたんですよ。
へ~、そのやかましいせいけんと ふたりっきりってわけじゃなかったんだな。
まおうのことばに せいけんがガミガミとしゃべりだしますが、いつものことなので ふたりは ききながします。
そうなんです、まほうつかい、けんし、それと もうひとりだれかいたようなきがしますが、とにかくそのさんにんです。
おい、さいごのひとりは ほとんどわすれてるじゃねえか。おぼえておいてやれよ。
まおうが あきれます。
いえ、わすれたわけじゃないんですけど。なんでか おもいだせないんですよね。
ゆうしゃは じぶんのあたまにゆびをあてながら ふしぎそうにしています。
そういうのを わすれてるっていうんだが、まあいい。それが、このまちにきた りゆうと なにかかんけいがあるのか?
はい、わたしのなかまだったけんしの ふるさとがここだってきいたことがあったので。いまは どうしてるのかなって きになったんです。
ゆうしゃは うれしそうに はなします。
そうか、けんしのふるさとが『かたな』のまちなのは、とうぜんといえば とうぜんか。
まおうは あたまをかきながら ざんねんそうに なっとくします。
このまちは きにいりませんか? ゆうしゃが ききました。
おまえな、『かたな』ってのは いちおうおれたち まぞくにたいするぶきだろ? そんなものに かこまれていいきぶんはしないだろうが。
なるほど、そのはっそうはありませんでした。
ゆうしゃは はっときづいたように なっとくしますが、すかさず ゆうしゃのせいけんが くちをはさみます。
わたしという さいこうのせいけんのそばに いつもいるんだから、『かたな』みたいな りょうさんぶきなんかに おびえないでほしいわ。
せいけんの くちぶりに、まおうの こめかみがピクリとします。
だれがおびえてるって、このクソせいけんが。おれはまおうだ、にんげんのつくったぶきなんかに おびえるわけがないだろうが、もちろんおまえもふくめてな。
まおうは まるでほんとうのしょうねんのように ゆうしゃのせいけんに かおをちかづけて にらみをきかせます。
あら、いくらすごんだって こわくないわ。それに、おあいにくですけど わたしは……あら、なにかしら?
せいけんがなにか いいかけたところで、『かたなかじのまち』のひろばでなにやらさわぎがおきました。
なにかあったみたいです いってみましょう。
さわぎにきづいた ゆうしゃたちは、ひろばのほうへ むかいます。
ひろばでは おおぜいのおとこのひとたちが ぶきをてにして だれかとたたかっていました。
また でやがったな。なんどおいはらっても しつこいやつめ。
おい、そっちにいったぞ。かこんで こんどこそ とっちめるんだ。
ふざけるな、おいらひとりじゃ こいつをおさえきれねえよ。もっとひとをこっちによこせ。
おとこのひとたちが くちぐちにいいあっていますが、いっこうにさわぎは おさまりません。
なんだ、けものでも まよいこんだのか?
まおうは ひろばのようすをみて いいます。
いいえ、だれかと たたかっているみたいです。……あれは。
ゆうしゃは めをこらして、おとこのひとたちが かこんでいるだれかをみつめます。
そこにいたのは、はいいろのかみをした ひとりのしょうねんでした。
ころす、ころす、ころす。おまえら ぜんいんしねえ!
しょうねんは、はいいろのぶきをふりまわしながら、のろいのような ことばをまきちらします。
なんだあれは、まぞくか? いや、でもなんかちがうな。
まおうは ひとめみて しょうねんがまぞくでないとはんだんしますが、にんげんだともいいきれませんでした。
このままでは だれかが おおけがをしてしまいます。あばれているのは あのしょうねんみたいですし、わたしが いってとめてきます。
ゆうしゃは せいけんをてに、さわぎのちゅうしんまで むかおうとしました。
ですが、そのちょくぜんに のぶといこえがかけられます。
いや、すまんが まってくれないか。
こえをかけてきたのは、せはあまりたかくないものの たくましい てあしをした おじさんでした。
みたところ、あんたは ゆうしゃだろ? それじゃ あの『まじん』のこぞうが しんじまう。
どうやら、このおじさんは なにかをしっていそうです。
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