第17話 まほうつかいとどれいのくに

おおぜいのへいしが、ゆうしゃたちをとりかこんでいます。


つぶしあい、ごくろうであった。おかげでおまえたちを かんたんに『しょけい』することができる。


どれいのおうさまが いいました。


ちっ、けっきょくこうなるんじゃねえかよ。


まおうは、ひろうこんぱいながら まけんをてに たちあがります。


おまえは どうするんだ? おれとしては、おまえもまとめてあいてにしたってかまわないぞ。


まおうは ゆうしゃにいいました。これから にんげんたちを うちたおすいじょう、もういちど ゆうしゃとたたかうことは さけられないと まおうは あきらめます。


ですが、ゆうしゃは まおうのとなりに ならびたちました。


わたしは、このこを たすけると きめました。とちゅうで なげだすことなんて ぜったいにしません。


ゆうしゃは そういいながら、せいけんをにぎるてが ふるえるのを ひっしにおさえます。


これまでのいきかたに せをむけることは、それほど くるしいことなのです。


ですが いずれにしろ、つかれはてた ゆうしゃとまおうに 『どれいのくに』のすべてのへいしに うちかつ ちからは のこっていないでしょう。


ゆうしゃよ、ざんねんです。あなたには まだまだ つかいみちがあるとおもったのですがな。


どれいのおうさまは しんそこざんねんそうに、ゆうしゃを ここで みかぎりました。


ちょっと、まちなよ。あたしぬきで おもしろい はなしをすすめるとか ずるいじゃん。


さきほどまで まりょくぎれでたおれていたはずの まほうつかいが、ゆうしゃとまおうの かたをささえにして たちあがります。


ふん、まだ いきておったか。まあよい、これから きさまともどもころすだけだ。


え~、いちおうあたし さっきまで あんたたちのたちばで たたかってたのに、ひどくない?


まけたら せきにんを とってもらうとも いったはずだ。


どれいのおうさまは まほうつかいへ むじひにつげます。


そういえば そんなこといってたね。だけどこれもおぼえてる? あとのことは あたしがぜんぶ めんどうをみるとも いったはずだよ。


まほうつかいの ことばが ちからづよくひびきます。


よまいごとを。このばにあつめたのが へいしだけとおもったか。


どれいのおうさまの あいずで、さらにゆうしゃたちを とりかこむ ひとがふえました。


みんな くろいローブをきた、おおぜいのまほうつかいたちです。


ありゃ、さがしてもいないなと おもってたら、こんなところにいたんだ。


まほうつかいのおんなのこは、すこしだけおどろいたようすです。


わがくにで どれいとしていきることをきめた まほうつかいどもだ。どうほうの まほうでしねるのなら うれしかろう。


いよいよ これでおわりにしようと、どれいのおうさまは さいごのこうげきのあいずをおくります。


たくさんのへいしたちが、たくさんの『やり』や『や』を、たくさんのまほうつかいたちが、たくさんの『まほう』をゆうしゃたちに うちこみます。


ゆうしゃにも まおうにも それをふせぐちからが のこってません。


まほうつかいのおんなのこにも、もう まほうをつかうだけのまりょくがのこってません、でした。


かのじょが まおうのからだに てをふれるまえの はなしですが。


ゆうしゃたちをちゅうしんに、かぜが まきおこります。


すずやかで、はるのおとずれをおもわせる かぜが、『やり』も『や』も『まほう』も、すべてまきこんで そらにまいあげました。


ちっ、すべてのちからを つかいはたしたのではなかったのか?


いまいましげに どれいのおうさまが いいます。


まりょくを ぜんぶつかいきっただけで あたしのてあしは まだうごくし、まりょくだって ちょうどいい ほきゅうばしょが あるからね。


まほうつかいのおんなのこは、まおうにふれていた かたから まおうのちからをすいあげていました。


おお!? ものすごく ちからがぬけるぞっ。おまえ なにしてやがる!


まおうが、まほうつかいのおんなのこに もんくをいいます。


あんたの むだな『まそ』を まりょくにへんかんしてやってんだから もんくいわない。ほんと、それだけの ちからをもってるのに、たたかいかたが ざつすぎるっての。


まほうつかいのおんなのこは、えんりょなく まおうから ちからをすいつづけ、そのはんどうで くちもとから ちがこぼれていました。


だいじょうぶ、ですか?


ゆうしゃが しんぱいします。


だいじょうぶだっての。……まったく、じぶんのしんぱいはできないくせにね。


まほうつかいのおんなのこは、ちをながしながらも うれしそうにほほえんで、『どれいのくに』のへいしたちや まほうつかいを みすえます。


へいしやまほうつかいは、こんどはもっとたくさんの『やり』や『や』、『まほう』を はなつじゅんびをしています。


じょうとうじゃん、やっぱりあたしは『みんな』のためにたたかうよりも、『じぶん』のためにたたかうほうが しょうにあってるね。


まほうつかいのおんなのこの まりょくがたかまります。


まおうが もうたっていられないくらいにすいあげた まりょくを、いろんなものをこわすためのちからに へんかんします。


もういちど、へいしやまほうつかいが『やり』や『や』、『まほう』を はなちましたが、ておくれでした。


ぜんまりょくかいほう! ぶっこわれちゃえ!!


がっしゃ~ん!! どっご~ん!! どんがらがっしゃ~ん!!


まほうつかいのおんなのこが はなったまほうは、いろいろ ひととしてどうかとおもう かけごえとともに、あつまっていた『どれいのくに』のへいしや まほうつかいのどれいだけでなく、しょけいだいや おおひろばも ふくめて せいだいに はかいしていきました。


──────────なんて ひじょうしきな おんなだ。


まおうが つぶやきます。


ゆうしゃも くちには だしませんでしたが、まほうつかいによる はかいのさんじょうをみて、まおうのつぶやきにこころから どういしました。

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