第14話 まほうつかいのおんなのこ

『どれいのくに』のろうやのなかに ゆうしゃとまおうが とらわれています。


ついさきほど ろうやからつれだされた まぞくのこどもは、これから『しょけい』されるそうです。


ふたりは じぶんじしんのむりょくかんに うちひしがれていました。


まおうは、ろうやからぬけだせない じぶんじしんがゆるせません。


さらにいえば じぶんが まおうとしての せきむからにげたせいで こどもがころされそうになっているじじつも ゆるすことができません。


ゆうしゃは、ひたすらに じぶんじしんがゆるせません。


じぶんは ただしいことをしたはずでした。じぶんは みんなのためにがんばったはずでした。


そうおもいながらも、これからひとりのこどもが ころされるじょうきょうをつくったのは、まちがいなく じぶんじしんであることがゆるせません。


ふたりは じぶんじしんがゆるせないのに、ふたりとも ろうやからでることはできません。


ここは ろうやなので、なかのひとが どれだけがんばったところで ぬけだせるようには なっていないのです。


ですがそのとき、そとからおおきな ものおとが きこえてきます。


がっしゃ~ん! どっご~ん!


いいえ、ものおとというよりは、ものすごい はかいのおとです。


いろいろなものが こわされるおとが、だんだんと ふたりがいるろうやまで ちかづいてきました。


ふたりは おどろきながら いきをころして じっとしていると、だれかが ろうやのまえにやってきます。


くろいローブをみにまとった、おんなのこでした。


あれ、こんなところで なにやってんの?


おんなのこは、ろうやのなかの ゆうしゃをみていいます。


あ、あなたは なんでここに?


ゆうしゃも、おんなのこをみて おどろきます。


やってきたのは まほうつかいのおんなのこ、かつて ゆうしゃといっしょにたたっかった なかまです。


あたし? あたしはちょっとヤボようでね。ここに つかまってるもんだとおもったけど、みあたらなくてさ。……それで、あんたは なんで?


まほうつかいのおんなのこは、あらためてゆうしゃに きいてきます。


わたしは、このくにで まほうつかいのみかたをしたことで つかまりました。でもいまは、すぐにでも ここからでないといけないんです。


ひっしに、ゆうしゃは いいます。いそいで おいかけないと、まぞくのこどもの『しょけい』が はじまってしまうからです。


そうなんだ、このくに まほうつかいに あたりきついからねぇ。で、ここからでたいんだ? いいよ。


まほうつかいのおんなのこは そういってかんたんに ろうやのおりを なぐってこわしました。


……おい、こいつ なんなんだよ?


ゆうしゃのとなりにいる まおうが あぜんとしています。


すこしまえまで、わたしと いっしょにたたかってくれたひとです。ものすごく つよいんですよ。


ゆうしゃが まおうにこたえているあいだに、まほうつかいのおんなのこは ふたりのてにつながれたくさりを かんたんにひきちぎりました。


はい、これでいい?


まほうつかいのおんなのこは きいてきます。


…………このおんなは『ぶとうか』とか『せんし』かなにかか?


まおうのかおが ひきつっていました。


しつれいな、れっきとした まほうつかいだよ。それに、あんたは まぞくだね。においで わかるよ。


まほうつかいの おんなのこは ひとめみて、ゆうしゃといっしょにいるしょうねんが まぞくであることにきづきました。


きづいていながら、おれをたすけたのか?


まおうは おどろきます。


にんげんかまぞくかなんてどうでもいいでしょ。あたしは、あんたも このくさりを はずしてほしそうだったから はずしただけだよ。なにかすることが あるんじゃないの?


まほうつかいのおんなのこは あっけらかんとこたえ、ふたりは どうじにじぶんたちがするべきことを おもいだします。


たすけていただきありがとうございます! ちゃんとした おれいができずもうしわけありませんが、わたしたちは いそがせてもらいます。


いいよ~、いってらっしゃい。またあとで、あうかもだけどね。


まほうつかいのおんなのこは、あわてるゆうしゃをきにするようすもなく かるく てをふって ふたりをおくりだします。


ゆうしゃとまおうは いそいで そとにむかいました。ゆうしゃは とちゅうで とりあげられていた せいけんをかいしゅうすることもわすれません。


『しょけい』がどこでおこなわれるのか わかりませんでしたが、おおどおりにでたふたりは おおぜいのひとがあつまっているばしょへ むかいました。


ふたりが おおきなひろばまで たどりつくと、まぞくのこどもが『しょけいだい』にのせられているのがみえました。


おあつまりのみなさまがた、いよいよおまちかねの『まぞくのしょけい』のじかんになりました。


『しょけいだい』のとなりで、おとこのひとが おおきなこえをあげます。


およろこびください。われら『どれいのくに』をおびやかしたまぞくは これでようやくねだやしにすることができるのです。


おとこのひとのこえに、あつまったみんしゅうは おおごえでわきあがります。


まぞくのこどもが ころされることが、とてもうれしいみたいです。


それでは おうさま、あいずをよろしいでしょうか?


おとこのひとは、おおきいごうかな いすにすわったおじいさんにいいました。


そのひとが、『どれいのくに』のおうさまのようです。


おうさまが いいます。


うむ、ころせ。


おうさまのあいずに したがって、しょけいをたんとうしているひとが、まぞくのこどもにむかって つるぎをふりあげました。


まってください!!


そこに、おおきなこえが ひびきます。


『しょけいだい』のまえに、ふたりのひとがあらわれました。


ゆうしゃと、まおうです。


そのこを、ころさないでください!


ゆうしゃが、いっぽまえにふみだしました。


ひとりのまぞくをたすけるために、ゆうしゃが ふみだしたのです。

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