壁を叩く音【カクヨム百物語応募作】

フクロウ

壁を叩く音

 リアル怪談は、割と地味なもの(というよりも不思議なもの?)も多いような気がします。創作ホラーのように危険な目に遭ってしまえば命がないか精神的に病んでしまいそうですからね。


 僕自身はまだ何かを見たことはありません。が、割と音は聞こえるようで小学生の頃の話ができたらなと思います。





 小学3、4年生くらいのときだったか、地元のサッカー少年団の夏合宿があったときにどこか地方の施設に泊まったときの話です。


(記憶があやふや、というか当時の僕は地名とかに興味がなかったのかも)


 夕食を食べて、いい時間の夜になると、引率の先生がカーペットの敷かれた広間にみんなを集めて怖い話をし始めました。30人くらいだったかな? 1年生から6年生までみんなじっと先生の話に耳を傾けていました。


 僕は当時から怖い話が苦手だったんですが、強制参加的な、というかその広間が寝る場所だったので仕方なく話を聞いていました。体育座りをしていたような気がします。


 今思うと話は割とオーソドックスな感じで「トイレの個室から紙がないという声が聞こえてトイレットペーパーを渡したら、その紙じゃないお前の髪だ〜!!」とか「恐怖の味噌汁(今日麩の味噌汁)」とか今ならダジャレかよと突っ込んでしまうような話をただ怖い口調でしゃべってるだけだったんですが、全くホラーに免疫のなかった僕はどの話も怖々と聞いていました。


 先生からすると、一つの夜の盛り上げというか、合宿の雰囲気を楽しんでもらおうとやっていたんだろうと思いますが。


 話をしている最中、突然、ドンッと壁が叩かれました。怖い話の最中だったので僕は思わずビクッと震えてそっちの方を見ました。


 他の子も壁を見ていました。それで少し落ち着いて考えてみると、壁際にいた子の体が壁に当たった音なのかなと、でも、それにしては音が大きすぎる気がしていたのですが、先生も話し続けていたので気にしないで最後まで聞いていました。


 その後、寝るぞという流れになってみんな寝たのですが、僕は恐くてなかなか寝付けず、結局、合宿に付いてきていた保護者のお母さんと別部屋で少しお話して過ごしました。


 先生もやってきて「なんだ○○怖かったのか?」とニヤニヤと。確かに、あんな話で怖くて寝れないなんて今思うと笑っちゃいますよね。


 まあ、それでなんとか寝て次の日、誰かが昨日の壁ドンの音のことを話していたんです。そしたら、聞いている子と聞いていない子が半々くらいに分かれていて。


 「えっ?」って思いましたよね。結構でかい音だったんです。びっくりするくらいですから。


 でも、確かに先生も何も気にせず話をしていたよな、と。壁の方を見ている子もいたけど、真っ直ぐに先生の顔を見ていた子もいたよな、と。


 不思議に思いながらもサッカーの練習です。ちょうどグラウンドもある施設だったのでそこにみんなで移動する途中、何人かの子が変な穴を見つけまして。


 トンネルのような入口で、でも地面の下に行けるようになっていて。


 たぶん、あれは戦争のときに造られた防空壕だったのではないかと話になったりして。


 壁の音と防空壕の関係性はわかりません。でも、なんだか関連性を想像してしまって気味が悪かったのを覚えています。


 その施設はその年の一回きりで利用しなくなったので詳細は不明です。もう今となってはどこにあったのか、今もあるのかもわからないですし。


 霊的なものを感じるときに、人によって得意な(?)感覚器官があると聞いたことがあります。目、耳、鼻、人によっては触覚や味覚もあるのかもしれませんが、僕の場合、もし霊的なものを感じるのだとしたら、たぶん、耳──聴覚が多いのかなと思います。

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