姉のメシがマズい

 流花るかの心臓は、煩いくらいに鳴っていた。

 台所から、姉の鼻歌が聞こえてくる。きっと、ノリノリで料理を作っている。それを思うと、流花の胃はキリキリと痛んだ。


 数分前、姉が席を外している隙に材料を確認した。今、猛烈にそれを後悔している。いったい、スピリタスとチョコレートとホヤでどんな料理を作るのだろうか。


 姉である流音るねは、非の打ち所が無い人間である。学業は常にトップクラスで、友人も多い。ただ、料理の腕前が壊滅的であった。そして、タチが悪いことに、本人にその自覚が無い。


 きっと、もうすぐAwazon超お急ぎ便が届く。前々回はエチケット袋が届いた。前回は胃薬が届いた。食卓の上。大きめのAwazon超お急ぎ便の箱が出現した。


「うわあ……」


 流花は、胃から逆流するものを堪えた。恐る恐る、開ける。流花は戦慄した。箱の中身を持って台所に走った。


「よーし!フランベするぞー!」


 姉が持っていたのは、度数96%の酒。封が開けられ、今まさにフライパンに落とされようとしていた。

 火。気化したアルコールに引火し、姉を包もうと広がる。流花は、それよりも早くキッチンを消火器で真っ白に染めた。

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