わたしがかんがえたさいきょうのおおそうじ

 千尋は諦めてベッドに寝転んだ。この部屋には物が多すぎる。


 ルームメイトかつ『偉大なる後輩様』の楓には「少しは物を捨ててください!」と常日頃から怒られてはいるが、そもそも捨てなきゃいけないような物を買う時点で間違っているのだ。

 私は必要な物しか買ってない。なので、この部屋には必要な物しかない。よって、何一つ捨てる理由はない。証明終了。大掃除終了。


「……とは言うものの」


 床の上に衣類や書籍や作りかけの機械ガジェットが散乱していた。この部屋には若草色の鮮やかなカーペットが敷いてあるが、現時点でそれを視認するのは困難だろう。

 このままだと楓に怒られるのは明白だ。どんなに整然と組み上げられた理論も、彼女の怒りには歯が立たない。


「せめて床が見えるくらいにはしておくか……」


 千尋はやおら体を起こす。まずは書籍を本棚にことから始めることにした。手始めに部屋のあちこちでタワーを作っている科学雑誌から、本棚に詰めた。そこで千尋の明晰な頭脳は分析した。部屋にある本を全て本棚に収めようとすると、部屋の2/3が本棚になると。


 千尋はふたたびベッドに寝転がった。何もかも面倒くさくなった。乱雑な床を漁ると、Awazon超お急ぎ便の箱が出てきた。開封する。千尋の目が爛々と輝いた。


「いいモノがあるじゃないか」


 火炎放射器だ。そうだ、全部焼き払えば良いのだ。

 早速スイッチを入れようとする。その瞬間に楓のドロップキックが千尋に炸裂した。


「アホか!」


 楓の目が、吊り上がっていた。

 結局、楓の監視の元、除夜の鐘が鳴り終わるまで掃除は続いた。

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