La Beach

 ビーチ中の視線が、晴奈に集まった。

 大樽ドリームビーチの海水浴客は、平日の夕方ということもありまばらではあったが、全員が晴奈の方を見た。


 ある者は弛みきった顔で晴奈を見つめ、ある者は顔を赤らめてすぐに視線を逸らした。


 何かおかしなことでもしてるのだろうか、と晴奈は思った。普通に泳ごうとしているだけである。もしかしたら、女が1人で海水浴をすることが、こちらでは珍しいのかもしれないと思った。


 晴奈が、離島から北海道の高校に進学してから3ヶ月が経っていた。島とそれ以外の場所だと、同じ日本であるにも関わらず、思った以上に文化の違いがあると感じていた。島にいたときは、しょっちゅう1人で海に潜っていたものだが、こちらの女性はそういうことをしないらしい。


「晴奈ちゃぁぁぁぁぁん!」


 晴奈が海に入ろうとすると、遠くから声が聞こえた。こちらで出来た友人の来美くるみだ。血相を変えて走っていた。小脇に「Awazon超お急ぎ便」と書かれた箱を抱えている。「10秒後に欲しくなる商品」が送られてくるサービスらしい。


 来美は、箱を引き裂くように開ける。中から、水着が出てきた。


「晴奈ちゃん! 全裸で海水浴したらダメだよ!」

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