Awazon"超"お急ぎ便

魔術師の青

　鳩が、地面に落ちた。

　力なく、ぽとりと落ちた。

　客席が静まり返る。

　シルクハットから、飛び立つはずの鳩であった。地面に落ちたきり、微動だにしなかった。

　暗く、地道な、手品師（マジシャン）人生の苦楽を共にしてきた相棒であった。チャールズ。名前を、心の中で呼ぶ。涙が、涙腺まで登ってきた。しかし、堪えた。輝彦はプロのマジシャンであり、今は舞台（ステージ）の上だ。

　場は、冷え切っていた。客の引きつった顔が目に映る。輝彦はそそくさと相棒をステージ脇に隠す。さあ、どうしようか。自身の心音だけが耳に響いていた。

　Awazon超お急ぎ便。ステージのど真ん中にあった。種も仕掛けもない。

　丁寧に、開封した。

　そこから、勢いよく無数の鳩が飛び立つ。客席から大歓声が湧き上がる。拍手の渦に、輝彦は手を挙げて応える。

　自分の手品（マジック）より、Awazon超お急ぎ便の方がよっぽど魔法（マジック）ではないか。忸怩たる思いが湧いてきたが、輝彦は決して表情に出さなかった。

　ステージから降りるまでが自分の仕事だ。