キラキラ瞳のお姫様
落田 さかな
キラキラ瞳のお姫様
私には、出会ってからずっと見守っている方がいます。だけど、私から話しかけることはできません。初めての出会いは十数年前、私がずっと見守ることになる方と出会いました。彼女は私を、とても大切にしてくれました。私をキラキラした瞳で見てくれるのがとてもうれしかったのです。ですが、人間は成長し、飽きていくものです。私はいつの間にか必要とされなくなってしまいました。私の心は色あせていき、埃が積もって動けません。もう一度、私をキラキラした瞳で見つめてくれないでしょうか。
私にはたまにお話しする方がいます。いつも私の隣にいる方です。その方は、とても無邪気でお日様のような性格です。私はその方を「お日様さん」と呼ぶようにしています。お日様さんも彼女のことを恋焦がれていて、私のライバルでもあります。ですが、今では長年隣にいるにいる友人です。お日様さんはいつもは元気ですが、彼女の話をするときはお日様が隠れて暗くなってしまいます。わたしも気を使って話をしないように心がけました。
何年たったのでしょう。あれからいくら時計の針が回ろうと、彼女が私を見てくれることはありませんでした。このまま私は消えてしまうのでしょうか。私は、希望を抱かなくなっていきました。その時です。
「あ!懐かしいの見つけた。この本よく読んでたなー」
私を彼女が見つけてくれました。やっとまた、見つめてくれるのかと思うとドキドキが止まりません。
「でも、もう読まないしな……どうしよう。捨てるか」
捨てる。捨てる?もう、彼女は私を必要としなくなってしまったのですね。彼女の小さかった体はもう大人と変わらないくらい大きくなりました。彼女は、大学に通うために上京をする様です。荷物整理をしていて、私がいる本棚の周りにもダンボールが置かれています。隣のお日様さんも捨てられてしまうのでしょうか。大人になってしまえば私の存在意義はないも同然です。私を必要としないことはわかっています。私の運命はそういうもの。だけれど、あと一度だけ、そのキラキラした目で見てくれないでしょうか。
「この隣の絵本はもうボロボロだなぁ。これは、売れないな」
そう彼女が手に取ったのはお日様さんでした。お日様さんは、私よりも色あせてしまっています。十何年も恋焦がれていた彼女に友人があっさりと捨てられてしまい、悲しくてたまりません。お日様さんと違って私は古本屋に売られました。彼女と離れ離れになってしまいました。
その時です、
「ままーみて!このえほん、とってもおもしろそう!」
私は、私をキラキラした瞳で見てくれる少女に出会いました。
私たち絵本は、読み手が成長してしまったら飽きられてしまいます。捨てられてしまいます。ですが私は、この子たちお姫様のキラキラした瞳を求めて、これからも物語を語るのです。
キラキラ瞳のお姫様 落田 さかな @nasumizu
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