第2話・ウニャ経理係と調理人を揃えるニャ

 ニャミえもんがオレに言った。

「自分のミスを隠蔽いんぺいしようとしている転生輪廻のクソ女神から、おっさんに三つの選択肢が出されたウニャ」

「どんな選択肢が?」

「オレからぶっ殺……もとい導かれて①ゾウリムシに転生する②ワラジムシに転生する……ちなみに、ゾウリムシは単細胞生物の微生物で。ワラジムシはエビやカニと同じ甲殻類で、ダンゴムシみたいに丸くならない等脚目な」


「三つ目の選択肢は?」

「③人として何か誇れるモノを残せたら、次の転生は特別に人間にしてくれるニャ……さあ、どれにするニャ」

 オレは力無く笑った。

「どうせ、人間になってもロクな人生は遅れそうにないから。ゾウリムシでもワラジムシでもウミケムシでも、なんでもい……」

 オレの言葉が終わる前に、ニャミえもんの強烈なネコパンチがオレの顔面に炸裂する。

「ぶぁかもん! ウニャァァァ!」


 壁にぶっ飛ぶオレ。

「げはっ、なんだよオレの底辺人生なんだから。オレが好きにしてもいいだろう」

「良くねぇ! オレはおっさんみたいな人生簡単に捨てるヤツを見ると、ムカつくニャ」


「ニャミえもん、おまえ言っているコトに一貫性がなくて、メチャクチャだぞ?」

「時々、魔導自動ネコ型少女人形だからバグが発生するニャ。人として生まれたからには一度くらい一念発起して。何か残るモノをなし得てみるニャ……実はオレ、異世界でこんな肩書きを持っているニャ」


 ニャミえもんが差し出した名刺には『異世界経営コンサルタント』とプリントされていた。

「転生輪廻の女神もオレの履歴書に、書いてあったコレを思い出して、ラストチャンスでおっさんに③番目の選択肢を出してきたニャ……知らんけど」

「でも、オレ起業して会社作るとかのスキルないから」


「なにも社長にならなくてもいいんだよ、オレに考えがある……小さくてもいいから、喫茶店のカフェマスターになれ」


 ニャミえもんの突然の、カフェをやれという提案にオレは驚く。

「お、オレが喫茶店カフェの経営者に?」

「このまま、グダグダの意味無し人生続けるよりはいいだろう……オレも協力してやっから、まずは今の仕事辞めて死ぬ気でカフェマスターの勉強しろウニャ」

 オレはニャミえもんの言葉に従って、仕事を辞めて必死にカフェマスターの勉強をして資格を取った。


  ◇◇◇◇◇◇


「どうだ、なかなかいい物件だろう……元々、飲食店舗だったからカフェをやる設備は揃っているニャ」

 オレはニャミえもんが手配してくれた、少しシャレた店内を見回した。

「ここで、オレが料理を作るのか?」

「カップ麺ばかり食べている、おっさんに期待してはしてニャイ。スタッフはオレがなんとかする……まずは、経理管理をする者だニャ」


 そう言うと、ニャミえもんは腹のポケットに手を突っ込んで。

 下半身がヘビの女を引っ張り出した。

 下半身がヘビの女は、怯えて部屋の隅で震える。

「いきなり、なんですか? ニャミえもんはこちらの都合も考えずに横暴です……ココどこなんですか」

 ニャミえもんが、オレに下半身ヘビ娘を紹介する。

「紹介しよう、メドゥーサだ……おい、メドゥーサおっさんに挨拶しろ」

「は、はじめまして……あたしの目を見てください」

 オレとメドゥーサが見つめ合う──途端にオレの意識がブラックアウトして、メドゥーサの声が消えゆく意識の中で微かに聴こえた。

「やっぱり、石化しちゃいました」


  ◇◇◇◇◇◇


 横たわっていたオレは熱湯を顔面にかけられている感覚に、飛び起きた。

「あちぃぃぃぃ!」

「カップ麺みたいに、熱湯で石化から元にもどったニャ」


 メドゥーサが、土下座をしてオレと目を合わせないように、詫び続けていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、メドゥーサは悪い子です……計算しかできないダメな子です」


 ニャミえもんが、謝っているメドゥーサに言った。

「経理は、表に出ないメドゥーサに任せれば間違いないニャ……経理に関してはメドゥーサは、資格を持っているニャ……さて次は、調理人だニャ……調理師免許を持っている、ヤツを引っ張り出すか」

 ニャミえもんは、オレの前で、また腹のポケットの中に手を突っ込んで何かを探しているような素振りを見せた。

「アイツはヌルヌルしていて柔らかいから、つかんで引っ張り出しにくいニャ……これかな? おまえに決めたニャ!」


 ニャミえもんが、袋の中から手を引っこ抜くと、内臓に歯車やコードが付いたモノがズルっと引きずり出された。

「ウニャ? 間違えたニャ」

 内臓を元にもどしたニャミえもんが、再度袋から手を抜くと、今度は緑色をしたスライムが出てきた。

 床に出されたスライムが、プルプル震えながら喋った。

「勝手に引っ張り出すな! こっちにだって都合があるんだ」

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