第3話・ウニャニャ!次は寡黙なバリスタと仕入れルートの達人だぜ
ニャミえもんの腹袋から取り出されたスライムは、オレが見ていると青年の姿に変身した──全裸青年の姿に。
目のやり場に困るスライム青年が、不満そうな口調で言った。
「オレこんな場所に引っ張り出したってコトは、調理人としての腕を買ってのコトだろうな……天才調理人のオレの腕前は高額だぞ」
腰に手を当てたニャミえもんが言った。
「相変わらず口先だけは達者ニャ……その、自信過剰な発言で、何度店をクビになったと思ってるニャ。雇ってもらえるだけありがたく思え、無職料理人……とにかく、服を着た姿になれ」
「やだね、服を着ていなくても調理はできる」
「熱い油がスライムの裸体に飛ぶニャ」
スライム料理人は、服を着た姿に変わった。
◇◇◇◇◇◇
ニャミえもんが言った。
「次に必要なのは、カウンターでコーヒー専門のバリスタニャ、ドリンク類も担当できる」
「バリスタ? そんなの必要か? 味がわからないお客にはインスタントコーヒー出しておけば」
「ぶぁかもん! ニャコパーンチ!」
「ぶほっ」
オレの腹にボディブローが決まる。
「コーヒーの味も店の売りにするニャ、マズいコーヒーを出す店にお客が足を運ぶと思うかニャ……営業時間は時々、夜の十一時にするニャ。アルコールをお客に出すのは禁止ニャ」
「なんで、時々営業時間の延長を?」
「それは、後々説明するニャ……さて、バリスタを連れてくるぜ……腹の袋から出てくるかな?」
ニャミえもんが、腹の袋に両手を突っ込んで何かを引っ張り出そうとした。
「ウニャ! やっぱりデカブツは引っ張り出すのが大変ニャ! イタタタっ、生みの苦しみニャ……どりゃあぁ」
ニャミえもんが引っ張り出したのは、巨漢でエプロンをした一つ目のキュクロプスだった。
寡黙なキュクロプスのバリスタが、オレを上から見下ろす。
「この、キュクロプスが煎れるブレンドコーヒーは絶品ニャ、コーヒーの味にこだわらないカフェにお客は来ないニャ」
◇◇◇◇◇◇
ニャミえもんが言った。
「次は仕入れルートのスタッフだぜ……なにしろ、スライムの調理人に食材の仕入れまで任せたら、どんな高級食材を仕入れて、趣味で高級料理を作るかわからニャイからな」
「そんなに、スゴイのかスライム料理人」
「勝手に異世界の魚河岸で一尾、目ん玉が飛び出るほどの高額な『異世界初マグロ』を競り落として、店に大損害を与えて店を潰したくらいだからな……スライム調理人を抑えて、安価の食材で最高の料理を提供するためには……あの、仕入れルートの伝説の達人しかいないニャ」
ニャミえもんが、腹の袋に片手を突っ込んで叫んだ。
「出てこい! 鬼ババア!」
袋の中から、頭に角を生やした鬼ババアが出てきた。
鬼ババアがニヤリと笑いながら言った。
「おや、ニャミえもん……あたしが必要と言うことは、あのスライム小僧もココにいるんだねぇ」
スライム調理人が、人型からスライム状態にもどって、部屋の隅でプルプルと震えていた。
ニャミえもんが、オレに言った。
「鬼ババアは、交渉の達人ニャ……直接、生産者と交渉したりして良品な食材ルートを確保してくれるニャ」
鬼ババアが、オレの手をシワだらけの手で、握って言った。
「あんたが、この店のオーナーかい……仕入れなら儂に任せておけ」
「鬼……ババア」
「誰が鬼じゃ! 儂だって若い娘の時代はあったわい!」
鬼ババアは、取り出した数枚のアルバム写真をオレに見せる、そこには頭に角を生やした若い鬼娘が写っていた。
「鬼娘が結婚して、鬼嫁になって、歳を重ねて鬼ババアに変わっただけじゃい!」
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