30. 『木暮姉弟のとむらい喫茶』2巻

 毎回言っている気がしますが、本当に大好きな作家さんです。『ヤンキー君と白杖ガール』で出会って以来、別名義の過去作も含めて全作拝読しています。



◆『木暮姉弟のとむらい喫茶』(2)うおやま


 訳あり姉弟が営む喫茶店が舞台。毎話それぞれの事情を抱えたお客さんにスポットを当てたオムニバス作品です。ハートフルなドラマに毎話胸がいっぱいになります。


※1巻の感想はこちら。

https://kakuyomu.jp/works/16817330658975712480/episodes/16818093081210319105



 6話、甘口カレーは息子の亡き母との思い出の味。母をうしなったことで介護疲れから「解放された」。綺麗事だけではない家族介護の現実とともに、確かにあった母子の絆に強く心を打たれます。


 7話、「障害に負けない前向きな姿」なんて健常者の押し付けかもしれない。事故で片足を喪った義足の少女と、生まれつき車椅子の少年。包み隠さない気持ちのぶつけ合いは危なっかしいけど、まぶしくて愛おしい。青春だ!



 8話、嘘だらけの人生の中でたった一つの本物は、言葉ではなくその奥にある確かな気持ちなのでした。


 引きこもりの女性を勇気付けてくれる子ども番組のお兄さん。想いを綴ったファンレターを出した直後、青天の霹靂。急死したお兄さんの部屋で見つかった文章は遺書だったのか? 最後の種明かし、苺のショートケーキで涙が止まりません……。



 9話と10話は、主役姉弟の出会いが明かされる前後編。前巻1話で登場したかき氷の伏線回収はここで。


 強く優しい母の在りし日の姿。重病に冒された人が日常を続けたい気持ち、他人事ではないので胸を締めつけられました。絶望の中でも最後まで信じることを諦めない。命をかけても伝えたい希望があるから……。


 母ののこしたノートとメモは、悲しみと思い出を分け合う姉弟の道標となります。サードプレイスという居場所を教えてくれた、カフェの老マスターとお客さんがとても粋です。そんな喫茶「こかげ」誕生秘話なのでした。



 どのエピソードも独立したお話として楽しめますので、機会がありましたらぜひ読んでいただきたい作品です。

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