31. 『だんドーン』1~5巻/『対ありでした。』8巻

 何気に取り上げるのは初めてだった作品から、ざっと振り返ります。



◆『だんドーン』(1)~(5)泰三子


 前作『ハコヅメ』『アンボックス』は既読。おなじみのギャグとリアリティを織り交ぜた作風で幕末を楽しくおさらいしております。演出が現代風なので、歴史初心者にも取っ付きやすいのが魅力です。



 本作の主人公は日本警察の創始者・かわ利良としよし。主に薩摩藩視点でストーリーがつづられます。史実なので仕方ないことではあるのですが、立て続けに容赦なく人死にが出ます。


 序盤ではとくにしまなりあきら公の最期には胸打たれました。他にはげっしょう和尚も。みんな丁寧にキャラ立てして、しっかり感情移入させられたうえで退場していくのが、本当につらいです……。



 幕府側の動向からも目が離せません。井伊いい直弼なおすけお抱えの忍び集団・多賀者にもかなりの描写が割かれていて、二重スパイとなった犬丸いぬまるの葛藤には終始心を揺さぶられました。忘れ形見のろうくんには幸せに生きてほしいと願います。


 両陣営の視点から描かれた桜田門外の変(4巻範囲)は、泥臭く生々しい凄惨さに目を覆いたくなるほどでしたが、それでも読ませてしまう筆力は流石です。



 5巻範囲ですと、中村なかむらはんろうが癒やし枠として機能しているのが、読者のメンタル的に有り難いですね。かわろうくんとのトリオ感にもほっこりします。


 かわの優秀ゆえの苦悩は『ハコヅメ』みなもとに通ずるものがあり、実においたわしくも味わい深いです。この後の歴史を考えると、まだまだ苦難が待ち構えているのは間違いないのですよね……つらい……でも読んじゃう。




◆『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』(8)江島絵理


 ドラマ化(配信済み)そしてアニメ化も予定されている百合コメ作品。前作『柚子森さん』も読了済みです。



 格闘ゲームの漫画だったはずが、いつしかリアルファイト編。外野のツッコミ&解説が完全に格闘漫画です。「正常な人間ならば」に草。ゲーム脳って恐ろしいんだなぁ……。


 そんな母娘対決は、読者の予測をはるかに超えた血みどろの激戦へ。見てくれ以上に想いの熱さが謎の感動を呼び覚まします。プラグマティズムに打ちつ「好き」の気持ちは得難いものなのです。



 ダブルKOも母娘ともに無事。頑丈ですね。格ゲーを通じた友だちとの思い出を語る娘と、それに優しく耳を傾ける母。美緒みおママの本当の気持ち。いい話だぁ……。母娘百合宗教画、誠に尊し(包帯とヨダレから目を逸らしつつ)。


 そして唐突な壁ドン。あやさんの復活の狼煙か!? その時、読者は思い出した――この作品が百合漫画だったことを!



 格ゲー部発足で物語は新たなフェーズへ。やはりあや×美緒みおが確実にキてます。あやさんはすぐそうやって◯そうとするから……。平常運転に戻ったのは、ある意味安心と言えるのでヨシ!

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