114. 新刊漫画選り好み!(33)『木暮姉弟のとむらい喫茶』1巻/『かさねと昴』連載完結ほか【漫画】

推し作家様を定期的に応援していく所存。


★20. 『ヤンキー君と白杖ガール』と『日向さん、星野です。』【漫画感想】

https://kakuyomu.jp/works/16817330658975712480/episodes/16817330661228677746



【単行本】


◆『木暮姉弟のとむらい喫茶』(1)うおやま


『ヤンキー君と白杖ガール』『日向さん、星野です。』のうおやま先生最新作。喫茶店を舞台にした心温まるオムニバスです。


1話、亡夫がハンバーグを注文したのは妻に食べさせたかったから。「大切ななにかをうしなっても私たちは生きていかないといけない」。おまけカットで延々達朗たつろうさん語りするテル君にほっこり。


2話、一見良好な老夫婦の真実。仲直りはお別れの後に。

3話、愛猫へのとむらいごはん。愛とは無縁な者でも受け入れてくれる神様であってほしい。

4話、幼娘の辿たどり着いた死生観が素敵。おまけカットのパパ可愛いかよ!


5話、騒音おじさんが抱えた孤独。このお話は本当に嗚咽が漏れるぐらい感動しました。もう少しだけ生きることにしがみついてみようと、心から勇気付けられます。想いは重くて結構!


決して軽くはないテーマを扱っているのに、コメディタッチでライトな仕上がりは流石の先生です。前作・全前作同様、社会の片隅で慎ましく生きる人たちへの優しさが沁みる素晴らしい作品です。




◆『はっちぽっちぱんち』(2)嵯峨あき/カツラギゲンキ


いよいよ日常でも暴力衝動が抑えられなくなってきたキホ。同じように殴り合いを望むあいとの決定的な違いはリングの上で明らかに。殺すまで止まらない相手を止めるには格闘家のままではいられない。愛理の決断に敬意を。


続く試合はライバルたちの注目を集める中、圧倒的格上のらぶを相手にキホの野生の勘が炸裂。結果は次巻。らぶのプロフィール、嫌いなもの:空腹が切ない……。


ところで、1巻感想ではキホを「読者に共感させない主人公」と書きましたが、自分の本質が社会と相容れない苦悩は、やはり同情を誘わずにはいられません。

友達や母親を大切に思っているのは間違いなく本心。それはそれとして、人を殴りたくてしょうがない悲しきモンスターなのです。


原作者いわくキホ=ラスボス、だとすれば対戦相手は皆が主人公とも言えます。ヒロインたちがリングの上でラスボスを育て上げるという、業の深い物語にも見えてきます。


以下余談。そこかしこに漂う百合の波動も無視できず。キホ×レミ、キテる? 坂本さかもとさん→REINA様への重い感情が漏れ出ているコマもあり。こちらの答え合わせも次巻にて。




◆『あくまであまい私の彼女』(1)やとさきはる


可愛いJDと可愛いサキュバスとの百合コメ。少女漫画タッチの絵が可愛いのと、食べもの特にスイーツが美味しそうで可愛い。可愛い誘惑にもだえしながら耐える姿が可愛い。可愛いの暴力。元カノ登場で波乱の予感、次巻へ続く。


同時収録の読み切り『作ってあげたい!よもつご飯』は「よもつへぐい」がキーワードの悲恋。勿論百合。先立った彼女がこれまた美味しそうなご飯であの世に誘いかけてくるのですが……お互いを思いやる気持ちに感涙。グラタン食べたい。




【連載:モーニング/コミックDAYS】


◆『かさねと昴』〈完結〉山田近鉄


ボーイッシュ女子×女装男子の恋愛。完結は唐突に思えましたが、本作のテーマは描き切ったと考えれば腑に落ちます。二人の成長ぶりを示しつつ、これからも続く日常の一区切りとして終わったのが、爽やかな読後感を生み出していました。


そんな最終話、さり気なく触れられていましたが、例のクズディレクター(33話参照)も改心したのでしょうか。あの時のマサムネさんの格好良さときたら……処されて覚醒もやむなし。屈指の名シーンでした。


他にも心に残る場面がいっぱい。かさねちゃんのルームシェア解消、社外プレゼンでの涙は両方の気持ち理解できてつらかった……。すばるくんが兄と真正面から向き合う姿も格好良かったです。忘れてはならない森ちんは癒し。


山田近鉄先生の作品は『あせとせっけん』を始め、別名義の同人もあらかた既読。持ち前の「へき」を作品に昇華させる手腕が実にお見事で、しかも品があるのですよ……見習いたいです。

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