20. 『ヤンキー君と白杖ガール』と『日向さん、星野です。』【漫画感想】

真野魚尾(まの・うおお)です。ラブコメ大好き人間です。


ラブコメとは「ラブ」+「コメディ」ですから、コメディが主体です。

エモさばかりを追求して笑いがおろそかになっては良質なラブコメとは認められないのだぜ! という面倒くさい生き物でもあります。


そんな真野が絶賛するラブコメの名作を今回ご紹介いたします。

一見して重いテーマを扱っているようで、初めから終わりまでユーモアとあたたかさに満ちた2作品がこちらです。




◆『ヤンキー君と白杖ガール』うおやま


白杖はくじょうを持った弱視の少女・赤座あかざユキコと、顔に傷のあるヤンキー青年・黒川森生くろかわもりおとの出会いから物語は始まります。二人に共通するもの、それは世間からの偏見でした。




◇マイノリティに寄り添う


主役の二人を始め、登場人物は誰もが何かしらの生きづらさを抱えています。それは弱視であったり、対人恐怖であったり、性指向であったりと様々です。


扱う問題こそ軽くはありませんが、あくまでも娯楽作品です。等身大の若者が送る日常と、彼らを取り巻く大人たちの心情が、ギャグを頻繁に交えながらテンポよく描かれます。


それでいて、どのエピソードも常に社会的弱者の立場に寄り添うことを忘れてはいません。エンタメ性を保ちながら主軸を見失わないバランス感覚こそ、本作の持つ大きな魅力と言えるでしょう。




◇「見える」世界が広がっていく


「人生ってけっこう大変じゃない……!?」

「俺たち全員地球に間借りしてるだけ」

「私たちは同じ船に乗った船員」

「自分だけは自分の心の味方でいたい」


シリアス・コメディパートを問わず登場人物たちの発するさりげない一言は、ハッとするような気付きを与えてくれます。


気付きは読者だけにとどまりません。作中の、一見好ましからざる人物にもそれは訪れます。ユキコや黒川との交流、あるいはそれ未満のすれ違いを境に新たな発見を得て、より良い道を歩み出して行くのです。


特別であって特別じゃない、「どこにでもいる」若者を見守るような気持ちで手に取ってほしい作品です。




◆『日向さん、星野です。』うおやま


同作者による『ヤンガル』の次回作。不登校でひきこもりの日向ひなたももを訪ねて来たのは、同じクラスの頼られ役・星野岬ほしのみさき。ドア越しに始まる関係の行方に注目です。




◇優しくて面白い


高校生が直面する人間関係の問題が中心ながら、前作同様に説教くささとは無縁の良質なラブコメが繰り広げられます。こちらは少年誌掲載ということもあってか、小気味良いスピードでサクサクと展開していきます。


毎話ごとの山・オチ・引きも抜かりなく、ハラハラしながらも続きが気になること必至です。一癖も二癖もあるクラスメイトや家族たちも、人間味あふれる言動で舞台を賑わせてくれます。


若者も大人も、それぞれに抱えた生きづらさと折り合いをつけながら、前に進もうと足掻あがいています。登場人物たちに向けられる優しい眼差しとお茶目な笑いの両輪は、うおやま先生の著作に通底する類稀たぐいまれな美点だと思います。




◇他とは違う二人だけの距離感


フツウになれない私を認めてほしい、そんな日向さんの想いを星野くんは真正面から受け止めてくれます。三樹くんや原くんといったクラスの友人たちに向き合うのと同じように。友情ははたして恋へと変わっていくのでしょうか。


誰からも頼られ、日向さんにとっては完全無欠のヒーローに思えた星野くん。しかし彼自身も問題を抱えた一人の男の子だということが次第に明らかになり、物語は一層深みを増していきます。


「日向さん、星野です。」この何気ない呼びかけの持つ意味が、日向さんと星野くんにとってどう変化していくかが大きな見どころです。二人の関係の行く先を、ぜひ最後まで見届けていただきたいと思います。




好きなキャラ(ヤンガル):金沢獅子王、青野陽太、茶尾店長

好きなキャラ(ひなほし):原菊夫、花園ルカ、日向由実(ももの母)

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