29. 『進撃の巨人』に見る人生観【漫画感想】(※ネタバレ注意)
真野魚尾(まの・うおお)です。小説のサイトなのに漫画の話ばかりしている不届き者です。
およそ一月ぶりとなる完結漫画の感想はこちらのタイトルを取り上げます。真野が読み始めたのは、完結までのカウントダウンが最初に発表された頃だったと記憶しています。かなり遅いです。
◆『進撃の巨人』諫山創
有名作品ですので、前置きは必要ありませんね。考察などもすでに語り尽くされていることでしょう。以下、にわか読者の単なる感想です。
◇名作ゆえに
終盤の展開および結末(単行本での加筆・エンドロール含む)を、私は全面的に支持します。
絶望からの救済、一度は袂を分かった親友との対話、解り合うカタルシス……しかし諸行無常、物の哀れ……どれも大きく感情が揺さぶられました。
全34巻の長きに渡って、登場人物たちとともに怒り、悲しみ、笑ったすべての記憶が宝物です。
ただ、ここまで称賛しておいて何ですが、もう一度始めから読み返したいかと尋ねられると、答えに詰まります。最終局面に至るまでの過程が、あまりにもつらすぎるのです。
◇凄惨、壮絶
本作については、壮大なスケール感や重厚なテーマ、緻密なプロットなどが取り沙汰されがちです。無論、それらに圧倒されない理由はありません。
そのうえで私は、一番に着目すべき点は別にあると思っています。作者の精神力です。
創作意欲に溢れた若者であれば、人間や世界の本質に迫る作品を、誰もが一度は書いてみようと思い立つものです。ご多分に漏れず、私も試みた経験があります。
断念しました。人の心に潜む醜さや、避けられない闘争など、真摯に向き合おうとすればするほど、作者自身の精神が耐えられなくなっていくのです。
それらを見事に真正面から描ききった強靭な精神力こそ、最も尊敬すべきであると、本作を読み終えて感じました。
◇今日はダメでも、いつの日か
エレンも調査兵団も、初めは身近な人々から守ろうとしました。
そうして広げた手は壁を越え、海を越え、やがて世界を覆います。
しかし、時を超えることまでは叶いませんでした。
人は歴史から学びません。これは断言します。
しかし同時に、事切れたフロックにハンジがかけた言葉を、私は忘れません。
「学ばない」は「学べない」と同義ではないのです。そこに私も望みを託します。
◇心に翼を
人生は無意味です。それは一見して非情な事実に思えますが、むしろ救いとも取れます。誰もが持つ自由な意思によって、それぞれの意味を見出だせるからです。
役割から解放され、再び一個人へと戻ったハンジは、巨人を見下ろしながら感嘆の声を漏らしました。
クサヴァーとキャッチボールをできるならば、また生まれてきてもいいと、ジークは言いました。
きっと誰にとっても、何気ない日常こそが人生における至上の幸福なのです。本作が示すそんな人生観が私はとても好きです。
そして、最後の最後に親友の前でみっともなく本音を打ち明けたエレンが堪らなく愛しいです。
好きなキャラ:ハンジ、ユミル、ライナー、ガビ、キース、エレン
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