弾ける蒼も 眩しい翠も 儚い白も 遠い夏に幻を見た

 素敵な出逢いをした少女は、あの夏の日を思い出してこう思うだろう。


 あの時の蒼い空、煌めく雲、彼方まで広がる海。

 だが共に過ごした日々は、想い出の小箱に仕舞いっぱなしの宝物なんかじゃあ、ない。

 決して、ない。


 これから先もずっと、新しい宝物を一緒に探し、見付けていきたい。




 年下の少年に恋する少女は、あの夏の日を思い出してこう思うだろう。


 只の幼馴染みから、一歩踏み出せた記念の夏。

 同じ時間を共有する事が出来た奇跡を、心から喜ぶ。

 でも、それだけで終わらせるつもりは、更々ない。


 絶対に、少年の『特別』になってやる。

 嫌われないように、引かれないように、愛を育てていくんだ。

 その時が来るまで。




 壮年の平凡な男性は、あの夏の日を思い出してこう思うだろう。


 出会って3年。

 1年。

 いい歳になってから出来たパートナーと、暑い暑いと文句を言いながらも元気に過ごせた夏の日々。

 

 一緒にご飯食べて酒飲んで、何の利益も生まない話で楽しく平穏に過ごせたら。

 これ以上の幸せなど、何処にもない。




 恋に病むあの子も

 

 10連勤で満身創痍な社畜も


 ハンバーグ大好きな腕白坊主も


 みんなみんな


 忘れ難き『夏』がある


 そんな、特別な季節だから


 気が付けばふと思い出すのは


 遠い夏の記憶

 

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遠い夏に幻を見た 胡蝶花流 道反 @shaga-dh

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